交通事故の治療費打ち切り連絡を無視したらどうなる? リスクや対処法

2025年08月13日
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交通事故の治療費打ち切り連絡を無視したらどうなる? リスクや対処法

令和5年に築地警察署管轄内で発生した交通事故は166件で、死者は1名、負傷者は186名でした。

交通事故の被害者は、ケガの治療費を加害者側の保険会社に支払ってもらえます。一方、まだケガの治療が続いているのに、保険会社が一方的に治療費を打ち切ると連絡してくることがあります。その際、治療費打ち切りに不満があるからといって、保険会社からの連絡を無視したいと思われる方もいるかもしれません。

本記事では、交通事故の治療費打ち切りの連絡を無視するとどうなるのか、どのように対応すべきかなどをベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士が解説します。

出典:「警視庁の統計 令和5年(2023年)」(警視庁)


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1、保険会社から治療費打ち切りの連絡が来る理由は?

交通事故に巻き込まれ、ケガの治療が続いているにもかかわらず、保険会社から治療費打ち切りの連絡を受けてしまうこともあります。治療打ち切りの連絡があるタイミングや理由について解説しましょう。

  1. (1)治療費の打ち切りとは

    治療費の打ち切りとは、交通事故の加害者側の保険会社が、被害者の治療費の支払いを止めることです
    交通事故によって被害者が負ったケガの治療費は、加害者が加入している任意保険によってカバーされます。そして保険会社は、被害者の治療費を医療機関に対して直接支払うのが一般的です。これを「任意一括対応」とも呼びます。

    ケガの治療は、どこかの段階で完了します。治療の必要性がなくなったと判断した時点で、保険会社は治療費の支払いを打ち切ります。

  2. (2)治療費打ち切りのタイミングは「症状固定」|医師が判断する

    では、どのタイミングで、保険会社が「治療の必要性がなくなった」と判断するのかというと、被害者のケガが「症状固定」若しくは「治癒した」と考えたときです

    症状固定とは、治療を続けても症状が改善せず、これ以上治療を続けても効果が期待できないと判断される状態を指します。

    ケガが症状固定となったかどうかは、保険会社ではなく医師が判断するものです。保険会社が治療費打ち切りの連絡をしてきても、症状固定であるとは限りません。必ず医師に相談しましょう

  3. (3)保険会社が治療費の打ち切りを迫る理由

    保険会社が「治療の必要がなくなった」として治療費打ち切りの連絡をしてくるのは、治療費を含む保険金(損害賠償)の支払額を抑えたいためです。

    ケガの治療が長引くと、当然、保険会社が支払う治療費の負担が増えます。また、症状固定になるまでは、入通院慰謝料・通院交通費・休業損害などの支払いも発生し続けます。

    もし、被害者が治療費打ち切りに応じてくれれば、治療費を払うべき期間が本来より短くなり、保険会社としては支払う金額を抑えることができます。
    しかし、前述のとおり、症状固定の時期を判断するのは医師であって、保険会社ではありません。治療費打ち切りの連絡を受けても、そのまま受け入れるのではなく、医師に相談しましょう。

2、治療費打ち切りの連絡を無視したらどうなる?

保険会社から治療費打ち切りの連絡があると、面倒で連絡を無視したくなるかもしれません。しかし、連絡を無視してしまうと、かえって不利益が生じるおそれがあります。どのようなことが起こるのか、紹介します。

  1. (1)治療費の支払いを打ち切られる

    治療費打ち切りの連絡を無視していると、保険会社はそのまま治療費の支払いを打ち切る可能性が高いでしょう。
    治療費を打ち切られると、医療機関の窓口で支払う自己負担額が発生してしまいます(健康保険を適用する場合は、原則として3割負担となります)。

  2. (2)後遺障害等級認定に関して不利益に働く

    治療費の打ち切りを機に医療機関の受診を止めてしまうと、後遺障害等級の認定で不利となるおそれがあるでしょう

    ケガが完治せず後遺障害が残ったら、加害者側の自賠責保険会社を通じて、損害保険料率算出機構に対して後遺障害等級の認定を申請可能です。後遺障害等級が認定されると、認定等級に応じて、加害者側の保険会社に「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」の支払いを請求できるようになります。

    後遺障害等級の認定審査では、治療を適切に受けたものの、最終的にどのような後遺障害が残ってしまったか確認されます。そのため、等級認定を受けるためには、症状固定に至るまで治療を受け続けなければなりません。しかし、保険会社が一方的に治療費を打ち切った場合、まだケガの治療中で、症状固定に至っていないこともあるでしょう。

    症状固定に至る前に、保険会社から治療費が支払われないからといって治療を中止すると、認定機関から「治療をやめたから、後遺障害が重くなったのではないか」と疑われるおそれがあります。その結果、本来よりも低い後遺障害等級しか認定されないリスクにもつながってしまうでしょう。

  3. (3)休業損害などの損害賠償額が減る

    交通事故の被害者は、加害者側の保険会社に対して、治療費以外にもさまざまな項目の損害賠償を請求できます

    特に、以下の損害賠償については、症状固定に至るまで請求することが可能です。

    • ① 入通院慰謝料:交通事故でケガをし、入院や通院を強いられたことによる肉体的・精神的苦痛に対する損害賠償
    • ② 通院交通費:交通事故によるケガを治療するため、通院したときに発生した交通費の損害賠償
    • ③ 休業損害:交通事故のケガの影響で仕事を休んだ場合に、減少した収入を補填(ほてん)する損害賠償


    保険会社は、治療費の支払いを打ち切るとともに、上記の損害賠償に対応する保険金の額についても、治療費を打ち切ったタイミングを症状固定とみなして計算します
    その結果、治療をやめてしまった期間の保険金が受け取れなくなってしまうでしょう。

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3、治療費打ち切りの連絡が来た場合の対処法

保険会社から治療費打ち切りの連絡を受けた際、無視をすると先述のように適切な治療費を受け取れなってしまいます。そのため、連絡を受けたら以下のように対処してください。

  1. (1)医師に相談して、通院を続ける

    まずは医師に相談して、今後の治療の方針を明確化しましょう。現在のケガの状態が症状固定に至っていないことを医師に確認できれば、その旨を加害者側の保険会社へ説明することができます。

    また、医師から症状固定の診断を受けるまでは、医師の指示に従って通院を続けることが大切です。適切な治療を受け続けられるほか、十分な額の損害賠償(保険金)を獲得するためにも、決して自分の判断で通院を止めないようにしてください。

  2. (2)医師に診断書を作成してもらい、保険会社へ提出する

    保険会社から治療費打ち切りの連絡を受けた際、まだ治療中であることを伝えると、証拠として医師の診断書の提出を求められることがあります。診断書の提出を求められた場合は、主治医に依頼して診断書を書いてもらいましょう。

  3. (3)交通事故に強い弁護士に相談する

    治療費の打ち切りの連絡を受け、お困りの方は、弁護士に相談するのも手段のひとつとなります。弁護士へ依頼すれば、説得的に治療費の支払いを継続するよう主張可能です。

    また、まだ医師から治療が必要と言われていながらも、保険会社からの治療費打ち切りに応じてしまう方もいるかもしれません。その場合、あとから自己負担になってしまった通院費などを損害賠償として請求できます。適正額の損害賠償を受けるためには、弁護士のサポートが欠かせません。お困りの方は弁護士に相談しましょう。

4、交通事故について弁護士に相談するメリット

交通事故の被害に遭ったら、損害賠償請求について弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。

  • 治療費打ち切りの連絡を受けた際に、不利にならない対応についてアドバイスを受けられます。また、保険会社が強硬に打ち切りを主張してきても、まだ症状固定に至っていないことを毅然(きぜん)と主張することが可能です。
  • 交通事故による損害の額を、適正な基準(=裁判所基準)によって漏れなく計算、集計したうえで請求することができます。
  • 交通事故の客観的な状況に応じた適切な過失割合に基づき、適正額の損害賠償を請求できます。
  • 一部の法律事務所では、後遺障害等級認定の申請のサポートを受けられます。
  • 保険会社との示談交渉や、訴訟などの手続きを一任できます。手間を省けるとともに、適正額の損害賠償を受けられる可能性が高まります。
など


治療費打ち切りの連絡を受けてお困りの方や、交通事故の損害賠償請求を検討している方は、弁護士にご相談ください

5、まとめ

交通事故に関する治療費打ち切りの連絡を無視すると、そのまま治療費の支払いが打ち切られ、医療機関の窓口で自己負担が発生してしまいます。
また、後遺障害等級認定や、休業損害などほかの損害賠償項目にも悪影響が及び、十分な損害賠償を受けられない事態になりかねません。

加害者側の保険会社から治療費打ち切りの連絡を受けたら、無視することなく適切に対応することが大切です。弁護士に相談すれば、保険会社への対応についてアドバイスを受けられます。

ベリーベスト法律事務所は、交通事故被害者のご相談を随時受け付けております。治療費打ち切りの連絡への対応方法や、損害賠償請求に関するご依頼については、ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています