インターンシップ期間中の負傷は労災になる? 就活生が知るべきこと

2024年07月31日
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インターンシップ期間中の負傷は労災になる? 就活生が知るべきこと

東京労働局によると、2022年度に東京都内で発生した労働災害は1万802件で、そのうち中央区や千代田区が管轄の中央労働基準監督署で発生したものは914件でした。

インターンシップ(実習など)中のケガであっても、状況によっては労災保険給付を受給できる可能性があります。また、会社(企業)に対して損害賠償を請求する余地もあるため、必要に応じて弁護士のサポートを検討することをおすすめします。

本記事では、インターンシップ中に負傷した場合の対応として、労災保険給付の受給手続きや種類、会社に対する損害賠償請求などをベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士が解説します。

出典:「令和4年死傷災害発生状況」(東京労働局)

1、インターンシップ中に負傷! 労災認定は受けられるのか?

インターンシップの参加者が負傷した場合、労災認定(労災保険給付)の対象となることがあります。

労災認定を受けられるかどうかは、インターンシップ参加者が、通常の労働者(正社員など)と同様に、労働性があるかによって判断されます。なお、会社側が労災保険に加入していない場合でも、被災労働者は労災保険給付を受給できます。

労働者性が認められるのは、使用者の指揮命令下に置かれていると客観的に評価される場合です(最高裁平成12年3月9日判決参照)。なお、労災補償等に関して定めている労働者災害補償保険法は「労働者」を定義していませんが、労働者災害補償保険法上の「労働者」とは、法律の目的や趣旨などから、労働基準法9条で定義されている「労働者」を指すと解されているため、労働基準法の判例に倣うこととなります。

指揮命令関係の有無は、一例として以下の要素などを考慮して判断されます。

  • 具体的な業務指示の有無
  • 服務規程の適用有無
  • 他の従業員の働き方との比較
など


特に長期インターンシップの場合は、参加者の労働者性が認められる可能性が高いと考えられます。

2、労災保険給付を受けるに当たって行うべき対応

インターンシップ中の負傷等について労災保険給付を受けるに当たっては、以下の対応を行いましょう。



  1. (1)継続的に医師の診察を受ける

    労災保険給付を受けるためには、継続的に医師の診察を受けることが大切になります。労働との間に因果関係が認められない負傷等は、労災保険給付の対象外となってしまいますが、医師が作成する診断書などがあれば因果関係の証明に役立ちます

    ご自身の判断で通院をやめてしまうことなく、医師の指示に従って通院を継続しましょう。

  2. (2)労働基準監督署に請求書を提出する

    労災保険給付の請求は、労働基準監督署に請求書を提出して行います(ただし、療養の給付については医療機関の窓口に請求書を提出します)。

    請求書の様式は、労働基準監督署の窓口で交付を受けられるほか、厚生労働省のウェブサイト「主要様式ダウンロードコーナー」(労災保険給付関係主要様式)からもダウンロードできます。給付の種類によって様式が異なる点に注意して、該当する給付の請求書を準備しましょう。

  3. (3)会社に対する損害賠償請求も併せて検討する

    労災保険給付は、被災労働者に生じた損害全額を補償するものではありません

    実損害にかかわらず一定額が給付されるため、実損害に対して労災保険給付が大幅に不足するケースもよくあります。

    実損害に対する労災保険給付の不足額については、安全配慮義務違反(労働契約法第5条)や使用者責任(民法第715条第1項)に基づき、会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。

    補償内容が不足している場合は、弁護士のサポートを受けながら、会社に対する損害賠償請求の可能性を検討し、必要な準備を整えましょう。

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3、受給できる労災保険給付の種類

インターンシップ中の負傷等について受給できる労災保険給付には、以下の種類があります。どの給付を受給できるのかを確認した上で、漏れなく請求を行いましょう

  1. (1)療養補償等給付

    「療養補償等給付」は、労災に当たる負傷や疾病の治療に要する費用を補償する給付です。

    労災病院または労災保険指定医療機関では、治療を無償で受けられます(=療養の給付)。
    その他の医療機関では、治療費全額がいったん自己負担となりますが、後に労働基準監督署へ請求すれば還付を受けられます(=療養の費用の支給)。

  2. (2)休業補償等給付

    「休業補償等給付」は、労災による負傷や疾病が原因で休業した場合に、得られなかった賃金を補償する給付です。休業4日目以降、賃金の80%相当額が補償されます。

  3. (3)傷病補償等年金

    「傷病補償等年金」は、傷病等級3級以上のケガや病気が1年6か月以上治らない場合に、休業補償等給付から切り替えて行われる給付です。

    認定される傷病等級に応じて、給付基礎日額および算定基礎日額に対して313日分(第1級)・277日分(第2級)・245日分(第3級)の年金と、114万円(第1級)・107万円(第2級)・100万円(第3級)の一時金が支払われます。

    参考:「傷病等級表」(厚生労働省)

  4. (4)障害補償等給付

    「障害補償等給付」は、労災に当たる負傷や疾病が完治せずに後遺症が残った場合に、後遺症によって失われた労働能力に対応する逸失利益を補償する給付です。

    認定される障害等級に応じて、第1級から第7級の場合は年金と一時金、第8級から第14級の場合は一時金が支払われます。

  5. (5)遺族補償等給付

    「遺族補償等給付」は、被災労働者が亡くなった場合に、遺族に対して生活保障の目的で行われる給付です。被災労働者の死亡当時、その収入によって生計を維持されていた遺族に対して年金および一時金が支払われます。

  6. (6)葬祭料等

    「葬祭料等」は、被災労働者が亡くなった場合に、葬儀費用を補填する目的で行われる給付です。葬祭を行うのにふさわしい遺族に対して、一定の金額が支給されます。

  7. (7)介護補償等給付

    「介護補償等給付」は、被災労働者が要介護状態となった場合に、介護費用を補填する目的で行われる給付です。原則として、介護費用の実費相当額が支払われます。

4、労災の損害賠償請求を弁護士に相談するメリット

インターンシップへの参加中に負傷した場合には、会社に対する損害賠償請求について弁護士へのご相談をおすすめします。

労災の損害賠償請求を弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。



  1. (1)得られる損害賠償額の見通しが分かる

    弁護士に相談すれば、労災によってどの程度の損害が生じているのか、労災保険給付との差額はどのくらいかなどについて、正確な金額に近い見通しを把握することができます

    客観的に適正な損害賠償額を把握しておけば、実際に会社との間で示談交渉を行う際にも、提案する金額や会社側の提案を受け入れるかどうかなどを適切に判断できるでしょう。

  2. (2)実際の損害賠償請求の手続きを一任できる

    弁護士に依頼すれば、会社に対する損害賠償請求の手続きを一任できます。交渉・労働審判・訴訟などの手続きを状況に合わせて使い分けつつ、適切に対応してもらえます。

    損害賠償請求の手続きにつき、ご自身だけで対応するのは非常に大変です。弁護士に対応を任せることで、被災労働者の負担が大幅に減り、治療・学校での活動・仕事などに専念することができるでしょう。

  3. (3)損害賠償の増額が期待できる

    弁護士が法的な観点から説得的な主張を行うことにより、損害賠償の増額が期待できます。会社が不利を認めて損害賠償の増額に応じる可能性があるほか、裁判官などに対しても、被災労働者側の主張の合理性が伝わりやすくなるためです。

    特に、会社側から提示された損害賠償額に納得できない場合には、弁護士へのご依頼をおすすめします。弁護士を通じての交渉に切り替えることにより、会社側の態度が軟化し、早期解決につながるかもしれません

5、まとめ

インターンシップへの参加中に負傷した場合に、労災保険給付を受給できるかどうかは、労働者性が認められるか否かによって決まります。

会社の指揮命令下で労働していた場合には、労働者であるとされる可能性が高いため、労災保険給付の受給が可能でしょう。たとえば、会社から具体的な業務指示が行われていた場合、一般の従業員と同様の服務規程が適用されていた場合、一般の従業員と同様の勤務時間を課されていた場合などには、労災保険給付を受給できる可能性が高くなります。

また、労災保険給付を受給できるか否かにかかわらず、会社に対して損害賠償を請求する余地があります。労災について会社に損害賠償を請求する際には、弁護士へのご相談・ご依頼がおすすめです。請求手続きへの対応に伴う負担が減るほか、損害賠償の増額が期待できます。

ベリーベスト法律事務所は、労災の損害賠償請求に関する被災労働者のご相談を随時受け付けております。インターンシップへの参加中に負傷してしまい、会社に対する損害賠償請求をご検討中の方は、ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています