養育費は課税の対象? 支払いを受けるときに注意するべきことを解説
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中央区銀座を管轄する税務署は、京橋税務署です。
離婚する際には、財産分与など資産の整理が発生しますが、離婚に際し受け取った資産に対して課税されるのかは気になるところです。特に、養育費については、子どもの生活にも直結する事柄のため、どのような扱いになるのか心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、この記事では養育費は課税対象なのか、課税されるのはどのような場合なのか、課税されないための対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。
1、養育費は課税される?
まずは、養育費の基本と、養育費が課税されるのかについて解説します。
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(1)養育費とは?
「養育費」とは、未成熟の子どもが経済的・社会的に独立するまでに必要となる生活費や医療費、教育費などの必要経費のことをさします。
離婚すると夫婦関係は終了しますが、離婚によって親子関係が消滅することはありません。
民法には、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と規定されている
ので、親には未成熟の子どもを扶養する義務があります(民法第877条1項)。
また、父母が協議上の離婚をするときは、子どもの監護に要する費用については協議で定めることも、民法において規定されています。(民法第766条1項)。
したがって、離婚後に子どもと離れて暮らす親は、子どもを監護する方の親に、養育費を支払わなければなりません。 -
(2)養育費は原則非課税
一般的には、個人が何らかの理由で現金や財産を受け取った場合には、所得税や贈与税などの各種税金が発生すると理解されているでしょう。
しかし、離婚後の養育費については、原則「非課税」として扱われています。すなわち、養育費を受け取ったとしても、所得税や贈与税を支払う義務はありません。
まず、養育費と所得税の関係については、所得税法に規定があります。所得税法第9条1項15号
学資に充てるため給付される金品(給与その他対価の性質を有するもの(給与所得を有する者がその使用者から受けるものにあっては、通常の給与に加算して受けるものであつて、次に掲げる場合に該当するもの以外のものを除く。)を除く。)及び扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品
つまり、扶養義務者間で授受された養育費については、所得税はかからないということです。
また、養育費と贈与税の関係については、相続税法で規定されています。相続税法第21条の3第1項2号
扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
ここでいう生活費とは、「通常の日常生活を営むのに必要な費用で、治療費や養育費その他これらに準ずるものを含む」と、解釈されます(相続税基本通達21の3-3)。
そのため、親から子どもに支払われる養育費は通常必要と認められるものである限り、贈与税の課税対象とはなりません。
2、養育費が課税対象となる場合は?
前述のとおり、原則として養育費の支払いを受けても課税の対象とはなりません。
ただし、生活費または教育費の名義で取得した財産であっても、以下のような場合は、「通常必要と認められるもの以外のもの」として取り扱われるため贈与税の対象です(相続税基本通達21の3-5)。
- 預貯金した場合
- 株式の買い入れ代金や不動産の買い入れ代金に充当した場合
したがって、過大な養育費を受け取るケースでは、贈与税が課税される可能性があります。
なお、「通常必要と認められるか」については、被扶養者の需要と扶養者の資力など、一切の事情を勘案して、社会通念上適当と認められる範囲かで判断されることになります(相続税基本通達21の3-6)。
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3、一括払いの養育費に対する課税はどうなる?
養育費を毎月ではなく、成人するまでの期間分を一括で受け取りたいというケースもありますが、その場合は金額が非常に大きくなります。では、このようなケースは課税対象になるのでしょうか。
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(1)贈与税の計算方法
まず、贈与税の考え方から理解を深めていきましょう。
贈与税には、110万円の基礎控除額が設けられています。そのため、一括で受け取る養育費の金額が、他の贈与と合計して年間で110万円を上回らない場合には、贈与税の対象とはなりません。
しかし、一般的に考えると、一括で養育費を受け取った場合は110万円を超えることが多いでしょう。この場合、一括で受け取る養育費が「通常必要と認められるもの」に該当せず、贈与税が課税されることが多いと考えられます。
では、月額5万円の養育費10年分(合計600万円)をまとめて受け取ったケースを例として、どれくらいの税金を払わなければならないのかを確認してみましょう。
この場合、贈与額600万円から基礎控除額110万円を差し引いた490万円が課税対象となります。ここに税率をかけて、贈与額ごとの控除額を差し引きます。
贈与税の税率には「一般税率」と「特例税率」の2種類あり、直系尊属から未成年者への贈与については「一般税率」が適用されます。
一般税率と控除額については、以下の表のとおりです。課税価格 税率 控除額 ~200万円 10% 0円 ~300万円 15% 10万円 ~400万円 20% 25万円 ~600万円 30% 65万円 ~1000万円 40% 125万円 ~1500万円 45% 175万円 ~3000万円 50% 250万円 3000万円超 55% 400万円
課税価格が490万円の場合、一般税率は30%で、控除額は65万円となります。
したがって、贈与税は82万円(=490万円×30%-65万円)です。
つまり、養育費を一括で600万円受け取った場合には、82万円の贈与税がかかるので、税金を引いた残りの手取りの金額は518万円(=600万円-82万円)となります。 -
(2)養育費を一括で受け取っても非課税とする方法
養育費を一括で受け取ることには、未払いのリスクや途中で減額されるリスクを回避できるというメリットがあります。離婚後は相手との一切の接触を断ちたいという場合には、未払いの一括請求を希望する方もいるでしょう。
しかし、前述のとおり養育費を一括で受け取ると、贈与税がかかるため、月々受け取る場合よりも手取り額が目減りしてしまいます。
そこで、養育費を一括で受け取っても贈与税がかからないようにする方法として挙げられるのが、「教育資金贈与信託」制度です。
この制度を利用すると、子どもを受益者とする信託契約を結ぶことによって、1500万円を限度として非課税で養育費の一括支払いを受けることができます。
ただし、交付を受けるためには、信託銀行等へ領収書等を提出する必要があり、教育資金以外での使用については課税対象となるなど、注意するべき点もあります。
信託契約は非常に複雑であるため、活用を検討される場合には信託契約に詳しい弁護士に相談するのが良いでしょう。
4、養育費に関して弁護士に相談するのが良い理由
養育費は、取り決め時点だけではなく、その後の未払いなど、トラブルが起きやすい事柄です。離婚に際し、養育費が発生する場合は、弁護士へ相談することをおすすめします。
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(1)養育費の適正な金額を教えてくれる
月々の養育費の金額については、家庭裁判所が公表している養育費算定表を考慮して決定していくことになります。
しかし、算定表はあくまでも一般的な基準であり、離婚の理由、家庭の経済状況、子どもの健康状態、進学状況など一切の事情を考慮して金額を算定する必要があります。事案によっては養育費の適正額が相場を上回ることもあるでしょう。
弁護士に相談することで、依頼者の事情・意向をくみ取った金額で養育費の適正額を算出してもらえるので、相手との交渉を進めやすくなります。 -
(2)相手方との交渉を任せられる
弁護士に、養育費を含め離婚に関する一切の交渉を任せることができます。
話し合いによる解決を目指している段階で弁護士へ相談すれば、窓口が弁護士となるので、顔を合わせることなく交渉を進めることが可能です。
また、養育費の支払いを拒否している場合や、話し合いに応じない場合には、家庭裁判所の養育費請求調停を申し立てることになります。調停では、必要な資料等を提出したうえで、調停委員を介した話し合いによって解決を目指します。
弁護士に依頼すれば、申し立てや資料の準備等もすべて任せることができるため、負担は大幅に軽減されるでしょう。
なお、離婚自体について争いがある場合や、養育費以外にも話し合いが必要な場合は、夫婦関係調整調整(離婚調停)で、養育費についても話し合いを進めることになります。
5、まとめ
養育費は原則として非課税として取り扱われているため、税金が発生することはありません。しかし、一括受け取りなど例外的な場合には贈与税が課税される可能性もあるため、注意が必要です。
養育費の取り決めや離婚条件についてトラブルを抱えている場合には、適切な金額を受け取るためにも、弁護士に相談して対応を依頼することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスには、養育費問題など離婚事件の解決実績が豊富な弁護士が在籍しておりますので、ぜひ一度ご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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