一度決めた養育費を後から見直すことは可能? 変更できる条件と流れ

2025年11月04日
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一度決めた養育費を後から見直すことは可能? 変更できる条件と流れ

養育費は、離婚後の子どもの生活を支える大切な資金ですが、一度決めた金額や支払い条件はずっと固定されるわけではありません。収入の変化や生活状況の変動によって、支払額の増減や支払い方法の変更が必要になることもあります。

東京都の令和4年度「東京の子供と家庭」報告書によると、東京都で養育費の取り決めをしている世帯は3割超にとどまっており、そのうち8割以上が「文書による取り決め」を行っています。しかし、実際に養育費を受け取っている割合は文書による取り決めをしている世帯の3割超に過ぎず、支払いが滞るケースも少なくありません。

こうした現状を踏まえると、養育費の取り決めがある場合でも、状況に応じて支払い条件や金額を見直すことが重要です。本記事では、養育費の変更が可能な条件や、その具体的な手続きについて、ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。

参考:「令和4年度「東京の子供と家庭」報告書」(東京都福祉局)


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1、一度決めた養育費を見直したい! 変更は可能?

養育費は、状況が変われば金額や条件を見直せる場合があります。
支払う側や受け取る側、子どもの養育環境に変化があった場合、離婚後に養育費の増額や減額が認められることがあるため、詳しく紹介しましょう。

  1. (1)受け取る側の事情変更

    養育費を受け取る側の経済状況が悪化し、子どもの生活に影響が出る場合、増額が認められることがあります。
    たとえば、以下のようなケースでは、養育費の増額が認められる可能性があります

    • 受け取る側の収入の減少:勤務先の倒産、リストラ、病気やケガで働けなくなった場合
    • 子どもの教育費の増加:子どもが(私立学校・大学などへ)進学する、学習塾に通うようになった場合
    • 子どもの医療費の増加:子どもが病気や障害を抱え、継続的な治療やリハビリが必要になった場合
  2. (2)支払う側の事情変更

    養育費を支払う側の状況が変わり、従来の支払いが難しくなることもあります。この場合、減額が認められる可能性があります。
    たとえば、以下のようなケースでは、養育費の減額が認められる可能性があります

    • 支払う側の収入の減少:病気や失業、倒産などで大幅に収入が下がった場合
    • 支払う側の扶養家族の増加:再婚して新たに扶養する家族が増えた場合
    • 支払う側の経済的な事情:突然多額の医療費を支払う状況になる、事故による出費がある場合
  3. (3)子どもの環境の変化

    養育費は、子どもの生活を支えるためのものです。子どもが新しい家庭に入るなどして経済的に安定した場合、支払い義務が軽減されることがあります
    たとえば、以下のようなケースでは、養育費の減額または免除が認められる可能性があります。

    • 親権者の再婚と養子縁組:新しい親が養育義務を負う場合、元親の支払いが不要になる
    • 子どもの自立:就職や結婚などで子ども自身が経済的に独立した場合

2、養育費の見直しを行う流れ

養育費の金額を変更したい場合は、まず当事者同士で話し合うことが大切です。しかし、合意できない場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用する必要があります。

  1. (1)まずは相手と話し合う

    まずは、相手と話し合って養育費を変更できるか相談しましょう。対面、電話、メール、LINEなど、話し合いを進めやすい連絡手段で、養育費の増額または減額を提案します。

    話し合いでは、なぜ養育費の変更が必要なのかを、相手に具体的に説明することが重要です。たとえば先述のとおり、子どもの進学や病気による出費の増加、養育費を支払う側の収入減少などの理由が考えられます。

    もし相手が話し合いに応じない場合や連絡を無視される場合は、内容証明郵便で「養育費増額(減額)請求書」を送る方法もあります。これにより、相手に正式な請求の意思を示すことができ、養育費について相談できるか確認をした証拠として残すことができます。

  2. (2)合意できた場合は「合意書」を作成する

    話し合いで養育費の増額または減額について合意に至った場合は、必ず書面で「合意書」を作成するようにしましょう。口約束だけでは後日トラブルになりやすいため、変更内容を書面に残すことが重要です

    また、合意書は公正証書にすることをおすすめします。公正証書とは、公務員である公証人が作成する文書のことです。公正証書でない合意書は、相手が支払いを滞納しても、直ちに財産を差し押さえるなどして強制的に支払わせることはできません。しかし、公正証書であれば、相手が支払いを怠った場合、裁判をせずに給与や財産を差し押さえることが可能になります

  3. (3)話し合いがまとまらない場合は調停を申し立てる

    相手が話し合いに応じない、または合意できない場合は、家庭裁判所に「養育費増額(減額)調停」を申し立てましょう。調停では、調停委員が間に入り、当事者同士の話し合いをサポートします。

    調停を申し立てる際は、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に必要書類を提出する必要があります。主な必要書類は以下のとおりです。

    • 養育費増額(減額)調停申立書
    • 子どもの戸籍謄本
    • 収入を証明する書類(給与明細、源泉徴収票、確定申告書など)

    なお、調停には、子ども1人につき1200円程度の手数料と郵便切手代が必要です。

    調停で話し合いがまとまると、家庭裁判所で「調停調書」が作成されます。調停調書は確定判決と同じ効力を持ち、相手が支払いを拒否した場合でも、強制的に差し押さえを行うことが可能です。

    また、養育費の増額・減額は、調停を申し立てた月から適用されることが多いでしょう。

  4. (4)調停が不成立の場合は「審判」に進む

    調停で合意に至らなかった場合は、自動的に「審判」に移行します。審判では、家庭裁判所の裁判官が双方の主張や証拠をもとに、養育費の増額・減額が妥当かどうかを判断します。

    審判の結果、増額または減額が妥当と判断された場合は、裁判所が新たな養育費の金額を決定し、支払いを命じます。一方、変更が不要と判断された場合は、これまでの金額で支払いを継続することになります。

    養育費の金額を決める際には、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」が用いられることが一般的です。

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3、養育費の見直しを進めるうえで覚えておきたいポイント

養育費の見直しをする際には、いくつか重要なポイントがあります。特に、「算定表の改定だけでは増額できないこと」「養育費の変更後は公正証書を作成すること」が大切です。ここでは、養育費の見直しをスムーズに進めるために知っておくべきことを解説します。

  1. (1)養育費の額は基本的に算定表に基づく

    養育費の金額は、「養育費算定表」に基づいて決められるのが一般的です。この算定表は、家庭裁判所が公開しているもので、親の収入や子どもの人数などをもとに養育費の相場を示しています。

    養育費を増額・減額したい場合でも、基本的には算定表をもとに話し合いや調停が進められます。そのため、変更を求める際には、「なぜ現在の算定額が妥当ではないのか」という具体的な理由を示すことが重要です

  2. (2)算定表が改定されても、それだけでは増額の理由にならない

    「養育費算定表」は、過去に何度か改定されています。しかし、算定表が新しくなったからといって、自動的に養育費が増額されるわけではありません。

    実際、司法研究の報告でも「算定表の改定は、養育費の見直し理由にはならない」と明示されています。

    養育費を変更するためには、「事情の変更」が必要です。たとえば、以下のような特別な理由が認められる場合に、増額・減額の可能性があります。

    • 受け取る側の収入が大きく減少した
    • 支払う側の収入が大幅に増えた
    • 子どもの教育費や医療費が予想以上にかかるようになった
    • 再婚により扶養家族が増えた
  3. (3)養育費の見直し後は「公正証書」を作成する

    養育費の取り決めをしていても、実際に継続して支払われている家庭は決して多くないのが現状です。そのため、養育費の支払いを確実にするためには、「公正証書」を作成しておくようにしましょう

    公正証書は、先述のとおり、公証役場で公証人が作成する正式な書類です。公正証書に「強制執行認諾文言」を記載しておくと、相手が支払いを怠った場合に、裁判をせずに給与や預貯金を差し押さえることができます。

    強制執行認諾文言という文言があるかないかで、未払い時の対応が大きく変わるため、公正証書を作成する際には必ず盛り込んでおきましょう。

  4. (4)公正証書の作成方法

    公正証書を作成するには、公証役場で手続きを行う必要があります。具体的な流れは以下の通りです。

    ① 公証役場に連絡し、予約を取る
    事前に公証役場に連絡し、日程を決めます。

    ② 養育費の合意内容を公証人に伝える
    取り決めた養育費の金額や支払い方法などを公証人に伝えます。

    ③ 公証人が文書を作成し、双方が内容を確認する
    公証人が作成した文書を確認し、問題がなければ次の手続きに進みます。

    ④ 公証役場で署名・押印し、公正証書を完成させる
    相手とともに公証役場に出向き、署名・押印をして正式に公正証書を作成します。

4、養育費の見直しを弁護士に相談するメリットとは?

養育費の増額や減額を求める場合、「どのくらいの金額が適正なのか?」「相手が応じなかった場合はどうすればいいのか?」など、さまざまな疑問や不安が生じるでしょう。

このようなときに弁護士に相談することで、適切なアドバイスを受けながら、スムーズに手続きを進めることができます

  1. (1)適正な養育費の金額や増額・減額の可能性についてアドバイスを受けられる

    養育費の増額や減額を求めるには、「事情の変更」があったことを証明する必要があります。しかし、どのような事情が増額や減額の理由になるのか、自分のケースでは認められるのかを判断するのは難しいものです。

    弁護士に相談すれば、収入の変動や子どもの教育費の増加など、個別の状況をもとに適正な養育費の金額を計算し、増額や減額の可能性について具体的なアドバイスを受けることができます。

  2. (2)相手と直接交渉する必要がなく、精神的な負担が軽減される

    元配偶者との話し合いは、感情的になったり、意見が対立してスムーズに進まなかったりすることも少なくありません。特に、過去にトラブルがあった場合、直接交渉すること自体が大きなストレスになることもあるでしょう。

    弁護士であれば、相手との交渉を代理できるため、直接やりとりする必要がなくなり、精神的な負担を軽減できます

  3. (3)調停や審判の手続きを任せられる

    相手が養育費の変更に応じない場合、家庭裁判所に「養育費変更調停」を申し立てる必要があります。さらに、調停で合意に至らなかった場合は「審判」へと進み、裁判所が養育費の金額を決定します。

    しかし、調停や審判の手続きは、必要書類の準備や主張の組み立てなど、専門的な知識が求められるため、自分だけで対応するのは大変でしょう。

    弁護士であれば、調停や審判の申し立て、必要書類の準備、裁判所での主張まで一貫してサポート可能なため、スムーズに手続きを進められます

5、まとめ

養育費は子どもの将来を支える大切なお金ですが、離婚時に決めた金額が必ずしも適正なままとは限りません。収入の増減、子どもの進学や病気など、状況が変われば見直しが必要になることもあります。

しかし、相手が話し合いに応じない、調停や審判の手続きが難しいなど、自分だけでは対応が難しい場面も多いでしょう。

そんなときは、弁護士に相談するのもひとつの方法です。適正な養育費の算定や相手との交渉、裁判所での手続きまで専門的なサポートが受けられるため、養育費の変更をスムーズに進めやすくなります。養育費の見直しを検討している方は、ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています