子どもとの面会交流を父親が拒否する場合に取れる対処法とは

2024年03月15日
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子どもとの面会交流を父親が拒否する場合に取れる対処法とは

離婚後、親が子どもとの面会交流を拒否した場合に、他方の親がどのような対処法が取れるのかは非常に重要な問題です。近年も、この面会交流に関する制度の不備を主張して、国に損害賠償を求めた事件があり、東京高等裁判所が請求を棄却する判決を出しています。

それでは、親権者である母親が子どものことを思って会ってほしいと希望しているにもかかわらず、父親側が面会を拒否する場合、どうすればいいのでしょうか。

この記事では、面会交流の概要や、父親から拒否された場合の対処法についてベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士が詳しく解説していきます。

1、面会交流とは? 義務なのか?

まず、「面会交流」とは、子どもと離れて暮らしている父母の一方が子どもと定期的、継続的に会って話をしたり、一緒に遊んだり、電話や手紙などの方法で交流することを指します。
特に子どもと離れて暮らす側の親の場合には、子どもと会って話す貴重な機会であり、通常、非監護親となった父親は、離婚してからは積極的に子どもとの面会交流を求める傾向があります。
しかし、中には離婚後には面会交流を希望せず、親権者である母親が面会を求めたにもかかわらず拒否する父親もいます。

このような場合、面会交流は父親が求めることができる「権利」と考えるべきなのでしょうか、それとも母親から求められたら拒否できない「義務」と考えるべきなのでしょうか。

民法には、「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護すべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流・・・は、その協議で定める」と規定しています(民法第766条第1項)。これは調停離婚や裁判離婚の場合にも同様です(同法771条)。
そして、面会交流について定める場合には、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と規定されています(同766条第1項後段)。

最高裁判所としても、面会交流の権利性については消極的な判断を示しています。
最高裁判所平成12年5月1日決定の調査官解説では、「面接交渉の内容は監護権者の監護教育内容と調和する方法と形式において決定されるべきものであり、面接交渉権といわれているものは、面接交渉を求める請求権ではなく、子の監護のために適切な措置を求める権利である」と述べられているのが参考になります。

そして、面会交流の協議が調わないときや協議をすることができないときは、家庭裁判所が面会交流について定めることになります(同法第766条第2項)。これについては、最高裁判所平成12年5月1日決定が「別居状態にある父母の間で右面接交渉につき協議が調わないとき、又は協議することができないときは、家庭裁判所は、民法七六六条を類推適用し、家事審判法九条一項乙類四号により、右面接交渉について相当な処分を命ずることができると解するのが相当である。」と判断しています。面会交流の可否は「子の福祉」や「子の最善の利益」を基準に判断されることになりますので、親のためというよりは子どもの権利としての側面が強いものだと考えられています

2、父親が面会交流を拒否する場合にできること

それでは、離れて暮らす非監護親である父親が子どもとの面会交流を拒否する場合、親権者としてどのような対応をするべきなのでしょうか。
この場合に考えられる対応としては以下のようなものです。



以下それぞれについて解説していきましょう。

  1. (1)まずは父親との話し合いを試みる

    父親が子どもとの面会交流を拒否する場合には、まずは父母間でしっかりと話し合いの機会を設けるようにしましょう。

    最初から家庭裁判所を利用して手続きを行うという選択肢もあります。しかし、裁判所を通じた手続きは、基本的には1か月に1回の期日が指定されて裁判所を介して話し合いの場が設けられることになります。父母の間に裁判所が介在することになるため、どうしても機動的に話し合いを進めることはできず、解決までに相当時間がかかることが予想されます。

    したがって、家事調停などの手続きを利用する前段階として、しっかりと当事者間で解決の道を模索することが重要といえます

    父母間で話し合った際には、「なぜ父親は子どもに会いたくないと思っているのか」、「面会を拒否する他の原因があるのか」という理由を明らかにすることで、円満に面会交流が実施できるようになる可能性もあります。

    父母間で話し合いをする際、面会交流が普段父親と離れて暮らす子どもにとっては、父親と会って話して意思疎通をはかることで普段から自分が父親に愛されている・気にかけてもらえているということを実感するための大切な機会であるということを、父母ともに理解しておくことが重要でしょう。

  2. (2)面会交流調停を申し立てる

    夫婦間で話し合いをしても父親が面会交流に応じないという場合には、母親は家庭裁判所に、父親を相手方として子の監護に関する処分(面会交流)調停事件を申し立てることができます。

    家庭裁判所の家事調停手続きでは、家庭裁判所の裁判官(家事審判官)と民間から選ばれた2名の調停委員が間に入り、非公開の場で当事者双方の言い分を聴取して、話し合いによって適切・妥当な解決を目指すことになります。
    調停期日は、平日、おおむね1回2時間程度で行われます。基本的には、調停委員が中立的な立場から、別々に話を聞き、一方の意見を他方に伝える形で交互に進行する形をとります。

    子どもとの面会交流は、子どもに精神的な負担をかけることなく健全な成長を助けられるように、以下の事項を重視して話し合いを進めることになります。

    • 子どもの年齢、性別、性格
    • 子どもが就学しているか未就学か
    • 子どもの生活リズム、生活環境


    調停手続きの結果、話し合いがまとまった場合には調停成立となり、合意できた内容を記載した調停調書が作成されます。調停調書に記載された内容は裁判の判決と同じ効力を持ちます

  3. (3)面会交流審判により判断してもらう

    面会交流調停で話がまとまらなかった場合には、調停は不成立(不調)となり、手続きは終了することになります。
    この場合、この面会交流などの「子の監護に関する事件」は自動的に審判手続きに移行し、家庭裁判所の裁判官による審判により判断されることになります。これが、前記最高裁判所平成12年5月1日決定が示した、「別居状態にある父母の間で右面接交渉につき協議が調わないとき、又は協議することができないときは、家庭裁判所は、民法七六六条を類推適用し、家事審判法九条一項乙類四号により、右面接交渉について相当な処分を命ずることができると解するのが相当である。」という点に該当します。

    子の監護に関する処分の審判に関しては不服申し立てができます。審判の告知を受けた日から2週間以内に即時抗告をすることで、高等裁判所の判断を仰ぐことが可能です。

3、父親との面会交流について取り決めるべき内容

面会交流を行うことが父母の間で合意できたとしても、いざ実施する際にトラブルになったり揉めたりしないように、具体的なルールや内容を取り決めておく必要があります。

具体的には以下のようなルールや内容を書面により合意しておくことが重要です

  1. (1)面会交流の回数や時間

    月に何回、何曜日、何時から何時まで実施するのかについて具体的に取り決めておく必要があります。
    連休や長期休みの場合に宿泊を伴う面会交流を実施できるかどうかについても定めておきましょう。

  2. (2)面会交流を実施する場所

    実施場所については自宅や公共施設などを具体的に限定したり、親や子どもが自由に決められるようにしたりしておくこともできます。
    面会日までに親権者の同意を得るという形で決めることも可能です。

  3. (3)子どもの受け渡し方法

    面会当日、どこで、何時に、どのような交通手段で、誰が子どもを連れていき、誰が子どもを出迎えるのか、ということをできるだけ事前に取り決めておきましょう。
    交通費がかかる場合には、その費用負担についてもあらかじめ合意しておきましょう。

  4. (4)プレゼントやお小遣いの可否

    プレゼントを渡すことができるイベント(誕生日やクリスマス)やお小遣いの上限額を定めておくことも重要です。

  5. (5)学校や幼稚園のイベント事への参加可否

    入学式、卒業式、運動会、授業参観など子どものイベント事の周知や参加連絡などについても、あらかじめ合意しておくことでトラブルを防止することができます。
    これらのイベントへの参加は面会交流日としてはカウントされないと考えられています。

  6. (6)連絡手段

    面会交流の実施や緊急時の連絡手段については、父母双方があらかじめ指定しておくことが重要です。
    電話、メール、LINEなど自由に指定することができます。

  7. (7)祖父母との面会の可否

    非監護親側の祖父母との面会可否についても定めておきましょう。
    あらかじめ親権者の了承を得て面会できると定めることができます。

4、面会交流調停などは弁護士にご相談を

面会交流について父親が拒否しているような場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に依頼して代理人として話し合いをしてもらうことで、面会交流の実施について冷静に話し合いを進められる可能性が高まります。父母が顔を合わせずに調整することで感情的にならず適切な条件で内容がまとまるケースもあります
また、弁護士に交渉を代行してもらえば、相手方からの無理難題を排除して、適切な条件で面会交流の取り決めができる可能性があります。

さらに、話し合いが難航し面会交流調停を利用する場合であっても、代理人弁護士であれば、必要な書面の提出や各種主張・反論についても適切に対応してもらえるため、依頼者の希望に沿う内容で手続きを進められる可能性が高まります。

5、まとめ

この記事では面会交流を父親が拒否した場合の対処法や面会交流の具体的な中身について解説してきました。

離婚して離れて暮らす親が子どもとのコミュニケーションに消極的で、適切に面会交流を実施したいと思っている方や、離婚した父親から面会交流に関連して無理な要請や条件を突きつけられて悩んでいるという方は、一度弁護士に相談されることをおすすめしています。

お困りの方は、子の監護に関するトラブルについて豊富な知識・経験がある、ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士にぜひ一度お話をお聞かせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています