不動産投資を理由に婚約破棄できる? 金銭的損害と慰謝料請求

2024年10月31日
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不動産投資を理由に婚約破棄できる? 金銭的損害と慰謝料請求

令和4年度に東京都中央区が実施している区民無料法律相談に寄せられた相談のうち、婚姻・離婚に関する相談は75件でした。

別れに至る原因はそれぞれですが、中には不動産投資が原因の婚約破棄というケースもあるでしょう。しかし、不動産投資だけを理由に婚約破棄をすることは、違法と判断される可能性が高いため注意が必要です。

本記事では、不動産投資を理由に婚約破棄できるのかどうかなどについて、ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士が解説します。


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1、不動産投資を理由に別れを告げたら、婚約破棄?

不動産投資(ワンルームマンション投資など)を熱心に行っている婚約者に嫌気が差し、婚約を解消したいと考えても、一方的に別れを告げると、違法な婚約破棄に当たる可能性があるので十分ご注意ください。

  1. (1)婚約破棄とは? 婚約解消との違いは?

    「婚約破棄」とは、一旦有効に成立した婚約を、いずれかの当事者が一方的に破棄することをいいます。

    当事者間の合意に基づいて婚約を解消することはできますが、いずれかの当事者が一方的に行う婚約破棄は、正当な理由がなければ損害賠償責任が生じる可能性があります。
    なお、正当な理由の有無は、社会通念に従って様々な事情を考慮して判断されます。

  2. (2)不動産投資を理由とする一方的な別れは、違法な婚約破棄に当たる可能性が高い

    婚約者が不動産投資に取り組んでいることだけを理由に、一方的に婚約を破棄することは正当な理由が認められず、損害賠償責任が生じる可能性が高いでしょう。

    不動産投資は、原則として反社会的行為や違法行為に当たりませんし、婚姻生活に危機を及ぼす行為であるとも限らないからです。

    不動産投資をする婚約者に対して嫌悪感を抱いた場合でも、それだけを理由に婚約破棄を伝えることには慎重になるべきでしょう。

2、婚約破棄をすると、慰謝料を請求される?

正当な理由のない婚約破棄は、慰謝料請求の対象になります

配偶者が不動産投資に取り組んでいることは、婚約破棄の正当な理由として認められにくいですが、例外的に正当な理由に当たると判断されることもあり得ます。

  1. (1)正当な理由のない婚約破棄は、慰謝料請求の対象になる

    婚約は結婚に向けた当事者の合意であり、契約の一種です。

    婚約の当事者は、「互いに誠意をもって交際し、やがて夫婦協同体を成立させるように努める義務」を負います。婚姻は当事者の自由な意思に基づく合意によってのみ成立するものですから、婚約に基づいて婚姻届の提出を強制することはできません。もっとも、正当な理由なく婚約を破棄した場合には、債務不履行または不法行為に基づき、相手に生じた損害を賠償しなければなりません。

    正当な理由なく婚約を破棄された側は、多大な精神的損害を被ると考えられますので、慰謝料が認められる可能性が高いです。

  2. (2)婚約破棄の正当な理由の例|不動産投資は正当な理由と認められにくい

    婚約破棄の正当な理由としては、以下の例が挙げられます。

    • 婚約者が別の異性と性的関係を結んでいた
    • 婚約者が職業や収入を偽っていた
    • 婚約者が性的不能であることを隠していた
    • 婚約者が回復の見込みのない重病にかかった
    • 婚約後、婚約者の経済状況が大幅に悪化した(婚約者の責めに帰するべき失業、破産など)
    • 婚約者から暴力を受けた
    • 婚約者からモラハラを受けた
    など


    不動産投資は、それ自体が反社会的行為や違法行為に当たるわけではなく、婚姻生活への悪影響が常に生じるわけでもありません。

    そのため、婚約者が不動産投資に取り組んでいることは、婚約破棄の正当な理由としては認められにくいでしょう。

  3. (3)不動産投資が婚約破棄の正当な理由に当たるケース

    ただし、以下のような事情がある場合には、これらの事情とあいまって、婚約者が不動産投資に取り組んでいることが婚約破棄の正当な理由に当たると認められる可能性があります。

    • 不動産投資へ熱心に取り組むあまり、自分との会話の機会がほとんどない
    • 不動産投資によって多額の損失を出したため、婚姻生活への悪影響が強く懸念される
    • 収入に見合わない投資用不動産(投資物件)を購入し、非常に高額の不動産投資ローンや住宅ローンを組んでいることが婚約後に判明した
    • 反社会的勢力に当たる不動産会社との間で取引をしている
    など


    不動産投資を理由とする婚約破棄が認められるかどうかは、具体的な事情に即して法的な観点から検討する必要がありますので、弁護士に相談することをおすすめします。

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3、婚約破棄をした場合に請求され得る、慰謝料以外の金銭

正当な理由なく婚約破棄をすると、精神的損害に対する慰謝料だけでなく、以下のような財産的損害の賠償を請求されるおそれがあります。

  • 結納金
  • 結婚式場のキャンセル費用
  • 新婚旅行のキャンセル費用
  • 婚約指輪、結婚指輪の購入費用
など


「慰謝料だけ支払えば婚約破棄できる」と考えていると、さらに高額の損害賠償を請求されることもあり得る点に十分ご注意ください。

4、婚約破棄に関するトラブルについて弁護士に相談するメリット

婚約破棄を伝えたところトラブルになってしまった場合や、これから婚約破棄を伝えようと考えている場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

婚約破棄に関するトラブルについて弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。

  1. (1)婚約破棄の正当な理由があるかどうかアドバイスを受けられる

    婚約破棄は、正当な理由があれば認められる一方で、正当な理由がなければ違法となります。婚約破棄の正当な理由の有無は、法的な観点から検討しなければなりません

    弁護士に相談すれば、婚約破棄の正当な理由があるかどうかについて、法的な観点からアドバイスを受けられます。弁護士のアドバイスを踏まえて対応することにより、多額の損害賠償責任を負うなどのリスクを最小限に抑えられます。

  2. (2)慰謝料請求を受けた場合の対応をサポートしてもらえる

    婚約破棄をすると、相手から慰謝料を請求されるケースが多いです。

    弁護士に依頼すれば、婚約破棄に関する慰謝料請求への対応をサポートしてもらえます。相手に対してどのように反論すればよいのか、穏便に解決するためのポイントは何かなどについて、実務の経験に沿ったアドバイスを受けることができます。

  3. (3)相手との交渉を代行してもらえる

    婚約の解消に関する相手との交渉も、弁護士に依頼すれば代行してもらえます。

    弁護士は、相手の態度や考え方も踏まえつつ、穏便に婚約を解消できるように交渉を進めます。慰謝料の支払いについても、双方の主張や法的な相場を総合的に考慮して、適切な落としどころを見つけられるように、依頼者と相談しながら対応します。

    弁護士に交渉を一任すれば、相手と直接話す必要がなくなり、精神的な負担が軽減される点も大きなメリットのひとつです。

  4. (4)訴訟に発展してもスムーズに対応してもらえる

    婚約破棄や損害賠償に関する話し合いがまとまらないときは、訴訟で解決せざるを得ないケースもあります。

    仮に訴訟に発展したとしても、弁護士に依頼していれば安心です。訴訟は専門的な手続きですが、弁護士に任せればスムーズに対応してもらえます。

    婚約破棄に関する訴訟では、裁判所に対してさまざまな資料を提出し、婚約破棄に正当な理由があることを裁判官に理解してもらうことが大切です。弁護士は、裁判官の考え方の傾向なども踏まえつつ、依頼者にとって有利な解決を得られるように、適切な方針に基づいて訴訟対応を行います。

    早い段階から弁護士のサポートを受けることが、婚約破棄に関するトラブルを早期に解決するための近道です。婚約破棄のトラブルにお悩みの方は、お早めに弁護士へご相談ください。

5、まとめ

婚約者が不動産投資をしていることに嫌悪感を抱いている場合には、相手との合意による婚約の解消を目指しましょう。一方的に婚約を破棄すると、相手から慰謝料などの損害賠償を請求されるおそれがあるので注意が必要です。

婚約の解消に当たっては、法的な観点からの検討が必要不可欠です。特に、婚約破棄の正当な理由が認められるのかどうかについては、具体的な事情に即した慎重な検討が求められます。

当事者同士では、婚約の解消について冷静な話し合いができないケースも多いので、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所は、男女問題に関するご相談を随時受け付けております。婚約の解消でお悩みの場合は、できる限り穏便な解決を実現できるように尽力いたします。

婚約者の不動産投資を理由に婚約を解消しようと考えている方は、まずはベリーベスト法律事務所 銀座オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています