振替休日はいつまでに取得する必要がある? 法律上のルールを解説
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令和4年度に東京都内の総合労働相談コーナーに寄せられた労働に関する相談は17万4985件でした。
法定休日に働かせる代わりに「振替休日」を与えることは、労働者(従業員)の健康維持や人件費の抑制などの観点からメリットがあります。また、振替休日を与える際には、付与の時期も重要です。振替休日の効果が最大限発揮されるように、適切な付与時期を定めましょう。
本コラムでは企業の経営者や担当者の方に向けて、振替休日はいつまでに労働者に取得させるべきなのか、また労働者に付与するための手続きや注意点といったポイントを、ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士が解説します。
出典:「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(東京労働局)
1、振替休日とは?
「振替休日」とは、法定休日を労働日とする一方で、その代わりに休日とされた労働日のことを指します。
なお、「法定休日」は。労働基準法第35条によって付与が義務付けられた休日のことを指します。
1週間に1日、または4週間を通じて4日の休日が法定休日となります。
たとえば、2023年9月23日(土)が法定休日であるとします。
この日に労働者に働いてもらう代わりに、同年9月25日(月)をあらかじめ振替休日に指定します。
すると、9月23日は労働日となり、その代わりに振替休日とされた9月25日が法定休日となるのです。
また、振替休日は、法定休日と労働日をあらかじめ振り替えた場合に限り発生します。
法定休日以外の休日(=法定外休日)と労働日を振り替えた場合には、振替休日とは呼ばれません。
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(1)振替休日を与えるメリット
労働者に対して振替休日を与えることの企業側のメリットとしては、労働時間および労働日数の削減によって負担を減らすことで、労働者の健康を維持できるという点が挙げられます。
連日の長時間労働や連続の勤務は、労働者の心身にとって大きな負担となります。
過労が慢性化すると、労災(労働災害)や離職などにつながりかねません。
振替休日によって労働者の休息を与えれば、労働者の健康維持につながり、これらのリスクを軽減することができます。
また、振替休日には賃金が発生しないため、企業にとっては人件費を削減できるというメリットもあります。
とくに残業等によって人件費が多い状態の企業は、振替休日を適切に付与して人件費を抑制することも検討してみましょう。 -
(2)振替休日と代休の違い
振替休日と同じく、法定休日に出勤させた労働者を休ませる制度として「代休」があります。
振替休日と代休は似ていますが、以下のような点が異なります。① 振替休日
振替休日は、法定休日と労働日をあらかじめ振り替えて設定されます。
労働者が働いた日は労働日扱いとなるため、休日労働の割増賃金は発生しません。
② 代休
代休は、法定休日に働いた労働者に対して、その代わりに事後的に付与されます。
労働者が働いた日は法定休日であるため、休日労働の割増賃金が発生します。
2、振替休日はいつまでに取得させるべきなのか?
振替休日を付与する時期は、就業規則等の定めに従います。
振替休日の付与時期は自由に定めることが認められていますが、休日に働いた日から近い時期に振替休日を設定することが望ましいでしょう。
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(1)振替休日の付与時期は、就業規則等に従う
振替休日を付与する時期について、法律上は、とくにルールは定められていません。
振替休日の制度を定めることは義務ではなく、あくまでも企業の判断によって選択的に導入されるものに過ぎないためです。
したがって、振替休日を付与する時期は、会社がそのルールを定めた就業規則等の社内規程に従います。 -
(2)休日に働いた日から近い時期に設定することが望ましい
振替休日の付与時期については法律のルールがないため、会社は就業規則等によって付与する時期を自由に設定することができます。
ただし、振替休日の重要な目的のひとつは、休息によって労働者の健康を維持することです。この目的を考慮すると、近接した労働日と法定休日の間で振替を行うことが望ましいでしょう。
可能であれば1週間以内、長くても1か月以内には振替休日を与えることをおすすめします。
3、振替休日を付与するための手続き
以下では、企業が労働者に振替休日を付与する際に必要となる手続きを解説します。
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(1)就業規則等で振替休日のルールを定める
振替休日に関するルールは、休日に関する事項であるため、就業規則上の記載事項とされています(労働基準法第89条第1号)。
したがって、常時10人以上の労働者を使用する事業場において振替休日を付与する場合は、そのルールを就業規則に定めたうえで、労働基準監督署に届け出なければなりません。
新たに振替休日の制度を導入するなど、就業規則を変更した場合も同様です。
これに対して、常時使用する労働者が9人以下の事業場は、就業規則の作成・届出義務を負いません。
したがって、振替休日に関するルールも、就業規則以外の社内規程で定めることもできます。
ただし、労働者にとっての分かりやすさなどを考慮すると、作成・届出義務がなくても就業規則を作成して、そのなかで振替休日のルールを定めることをおすすめします。 -
(2)あらかじめ労働日と法定休日を振り替える
振替休日は、あらかじめ労働日と法定休日を振り替える形で付与しなければなりません。
法定休日に労働者が働いてから事後的に代替の休日を付与した場合は、「代休」となります。
代休の場合、法定休日とは異なり、休日労働の割増賃金を支払う必要がある点に注意してください。
就業規則等のルールに従い、事前に労働日と法定休日の振替を行ったうえで、その内容を労働者に対して通知するようにしましょう。
4、企業が振替休日の制度を導入する際のポイント
以下では、企業が新たに振替休日の制度を導入する際に注意すべきポイントを解説します。
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(1)振替休日の付与時期を適切に定める
労働者の疲労を回復して健康を維持するという趣旨を考慮すれば、法定休日の振替は近接した労働日との間で行うべきといえます。
とはいえ、適切な振替休日の付与時期は、企業によって異なります。
たとえば繁忙期が比較的長く続く企業の場合には、ある程度期間が空く法定休日と労働日の間でも、振替を認めた方がよいといえます。
会社の事業の性質や繁閑の状況、社内人材の業務状況などを考慮しながら、振替休日を付与する時期を適切に定めるようにしてください。 -
(2)週・月をまたいで振替休日を付与する場合は、賃金の計算等に注意
週または月をまたぐ形で振替休日を付与する場合は、時間外労働の時間数が変化する可能性に注意しなければなりません。
たとえば、1週間の所定労働時間が40時間で、労働日が月曜から金曜の週5日、法定休日は日曜だとします。
法定休日である2023年9月23日(土)と、労働日である同月25日(月)を振り替えた場合、2023年9月17日から23日までの1週間(日~土)の労働時間は、残業がなかったとしても48時間です。
法定労働時間は1週間当たり40時間なので、残業がなくても8時間分の時間外労働が発生して、割増賃金の支払いが必要になるのです。
また、月をまたいで振替休日を付与する場合には、1か月単位の労働時間に注意が必要となります。
たとえば、法定休日である2023年9月30日(土)と、労働日である同年10月2日(月)を振り替えるケースについて考えてみましょう。
9月の時間外労働が、9月29日までに45時間に達しているとします。この場合、労働日に振り替えられた9月30日に残業が発生すると、時間外労働が限度時間である45時間を超過します。
すると、36協定に特別条項が定められていて、かつ限度時間を超えることができる場合に該当しない限り、労働基準法違反となってしまうのです。
さらに前提を変えて、9月の時間外労働が、9月29日までに60時間に達しているとします(36協定の特別条項が適用され、60時間の時間外労働自体は適法であるとします)。
この場合、労働日に振り替えられた9月30日に残業が発生すると、時間外労働が月60時間を超えるため、超過分の割増賃金率は50%以上となります(労働基準法第37条第1項)。
このように、週または月をまたぐ形で振替休日を付与すると、賃金の計算や36協定との関係で、取り扱いの変化や問題が生じる可能性があることに注意してください。
5、まとめ
振替休日を付与する時期は、就業規則等によって自由に定められます。
ただし、労働者の健康を維持する観点からは、できる限り近接した法定休日と労働日を振り替えることが望ましいといえます。
振替休日については、賃金計算や36協定との関係など、企業が注意すべきポイントが多々おります。
適切に労務管理を行うために、労働問題に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所は、人事・労務管理に関する企業のご相談を承っております。
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