地位確認訴訟で復職できる? 不当解雇への対応法を弁護士が解説
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会社から突然解雇を告げられたとしても、「解雇理由に身に覚えがない」「解雇処分は重過ぎる」などと感じるときは不当解雇の可能性があります。
正当な理由のない解雇であれば、不当解雇を理由に会社に対して解雇の撤回を求めたり、裁判所に「地位確認訴訟」を提起して会社への復職を求めたりすることができます。また、復職ではなく金銭的な解決をすることも可能ですので、状況に応じて最適な手段を選択するとよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士が解説します。


1、会社から不当解雇された! 地位確認請求で復職できる?
不当解雇とは、会社が正当な理由なく労働者を解雇することをいいます。
解雇は、会社が一方的に労働者との雇用契約を解消する手続きで、労働者には生活の基盤を失うという重大な不利益が生じることから、解雇には厳格な規制が設けられています。つまり、会社は簡単には労働者を解雇することができないということです。
以下のような理由で解雇された場合には、不当解雇の可能性がありますので、解雇をすぐに受け入れるのではなく、労働問題の実績がある弁護士に相談することをおすすめします。
- 数回の遅刻を理由とする解雇
- 仕事上の軽微なミスを理由とする解雇
- 気に入らないという個人的、感情的な理由による解雇
- 性別、年齢、人種、国籍、障がい、宗教などの理由に基づく解雇
- 妊娠や出産を理由とする解雇
- 労働組合に加入または組合活動をしたことを理由とする解雇
- 残業代請求や有給休暇の申請をしたことを理由とする解雇
- 育児休業、介護休業の取得を理由とする解雇
- 業務上の負傷、疾病の療養による休業期間とその後30日間になされた解雇
- 女性労働者の産前産後の休業期間とその後30日間になされた解雇
このような不当解雇にあたる場合、解雇が無効になる可能性が高いです。会社の対応に不満がある場合は、会社との交渉や地位確認訴訟などの手続きで復職を目指すことも検討しましょう。
2、地位確認請求が行われる典型的なケース
労働者が会社に対して地位確認請求をする典型的なケースとしては、以下の3つが挙げられます。
詳しくみていきましょう。
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(1)普通解雇・懲戒解雇の無効を主張するケース
普通解雇とは、労働者の能力不足、勤務態度の不良、協調性の欠如など労働契約上の債務不履行を理由とする解雇をいいます。普通解雇が有効なものと認められるためには、以下の要件を満たさなければなりません。
- 就業規則に解雇事由の定めがあること
- 解雇理由が客観的に合理的であること
- 解雇の理由が社会通念上相当であること
- 労働基準法に基づく解雇予告または予告手当の支払い
たとえば、能力不足や勤務態度の不良を理由に解雇する場合でも、注意や指導など改善の機会を与えることなくいきなり解雇したようなケースでは、不当解雇と判断される可能性が高くなります。このような場合、労働者は地位確認請求を提起することが考えられます。
一方で、懲戒解雇とは、労働者の重大な規律違反などを理由に制裁としてなされる解雇をいいます。懲戒解雇は、懲戒処分の一種であり懲戒処分の中でももっとも重い処分になります。
懲戒解雇が有効なものと認められるためには、以下の要件を満たさなければなりません。- 就業規則に懲戒事由の定めがあること
- 解雇理由が客観的に合理的であること
- 解雇の理由が社会通念上相当であること
- 弁明の機会を付与するなど適正な手続きがとられていること
たとえば、労働者に業務命令違反や私生活上の犯罪行為などがあったとしても、その内容が軽微なものであった場合、懲戒処分の中でもっとも重い懲戒処分を選択することは不当解雇と評価される可能性があり、地位確認請求が行われることがあります。
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(2)有期雇用の従業員が雇止めの無効を主張するケース
有期雇用の従業員は、雇用期間の定めがありますので、契約期間満了を理由に更新されなかったとしても原則として雇止めは有効です。
しかし、有期雇用契約が繰り返し更新されていて、契約の更新を期待することについて合理的な理由がある場合には、雇止めは無効と判断されます。これを「雇い止め法理」といいます。
有期雇用の従業員が契約更新を拒否された場合、この雇い止め法理に基づいて雇い止めの無効を主張し、地位確認請求を行っていくことになります。 -
(3)休職期間満了で退職となった休職者が不当解雇を主張するケース
企業によっては病気や怪我で長期間働けない労働者に対して、「休職制度」という雇用契約を維持したまま一定期間労働義務を免除する制度を設けているところもあります。
労働者としては病気や怪我で働けない状態になったときは休職制度を利用して療養に専念することができますが、一定期間を過ぎても復職できないときは退職扱いになるのが一般的です。
しかし、復職可能であるにもかかわらず退職扱いにされたような場合には実質的には解雇と同視できますので、不当解雇を理由に復職を求めることができます。
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3、不当解雇で地位確認請求をするための流れ
不当解雇を理由に地位確認請求をする場合、以下のような流れで手続きを進めていきます。
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(1)不当解雇を証明する証拠を収集する
不当解雇で地位確認請求をするためには、労働者側において解雇が不当解雇であることを証拠により立証していかなければなりません。それには、以下のような証拠が必要になります。
- 雇用契約書
- 就業規則
- 解雇通知書
- 解雇理由証明書
- 人事評価書、勤務成績表
- 解雇までのやり取りを記録したメールや録音
このような証拠は従業員としての地位を失ってからでは収集が困難ですので、解雇を告げられたらすぐに証拠収集を始めることをおすすめします。
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(2)会社と直接交渉し、解雇の撤回を求める
不当解雇の証拠が集まったら、次に会社に対し解雇の撤回を求めて交渉を行うことが考えられます。
労働者ご本人が会社と直接交渉することが難しい場合には、弁護士が代理人として交渉に臨むことも可能です。
弁護士が関与することで、解雇の無効性を法的観点から明確に主張できるため、裁判に至る前に任意交渉で解決できる可能性も高まるといえます。 -
(3)労働審判・労働訴訟で地位確認請求をする
会社との交渉では復職が認められなかった場合には、裁判所に対して労働審判の申立て、または地位確認訴訟の提起を検討することになります。
どちらの手続きを選択するのかについて法的な制約はありませんが、話し合いによる解決の余地が残されている場合には、迅速かつ柔軟な解決が見込める労働審判の利用が適していると考えられます。
もっとも、労働審判や地位確認訴訟はいずれも一定の法的知識や実務対応力が求められるため、当事者本人のみで対応するのではなく、弁護士の助言や関与の下で進めることが望ましいといえます。
4、不当解雇は復職ではなく、金銭でも解決できる?
不当解雇をした会社に対して、不信感が募り、積極的には復職を望まないという方も少なくありません。
その場合、不当解雇の救済方法として、復職に限らず、金銭の支払いによって解決することがあります。したがって、積極的に復職を希望しない場合でも、損害賠償等の経済的補償を求めていくことが考えられます。
不当解雇を理由とする金銭的な解決方法には、主に以下のような方法があります。
不当解雇を争い、その解雇が無効と判断された場合には、労働契約は継続していたものとみなされます。その結果、解雇から現在までの間、本来であれば労務を提供していたと想定される期間について、未払い賃金を請求することが可能となります。これを「バックペイ(賃金支払請求)」と呼びます。
バックペイは、会社への復職の有無にかかわらず請求することができるため、復職を希望しない場合でも、その支払いを求めていくことは選択肢の一つになりえます。
② 未払い残業代を請求する
不当解雇をするような企業は、適正な残業代を支払っていない可能性も否定できません。証拠関係から未払い残業代が存在していることが明らかであれば、地位確認訴訟と併せて未払い残業代請求も行うべきでしょう。
ただし、残業代請求には時効があります。各賃金の支払い日から3年が経過すると、時効により残業代を請求する権利が消滅してしまう点に注意が必要です。
③ 慰謝料を請求する
不当解雇により精神的苦痛を被った場合には、慰謝料を請求するという方法も考えられます。
ただし、不当解雇であると認められれば常に慰謝料を請求できるわけではなく、復職や賃金の支払いがなされても癒えないような精神的苦痛を被った場合に限り慰謝料請求が可能です。
5、まとめ
不当解雇を争った場合の解決方法としては、地位確認訴訟による復職だけではなく、バックペイや未払い残業代請求による金銭的解決も有効な選択肢です。
不当解雇の争いには法的知識や交渉力が求められるため、弁護士のサポートを受けることで適切かつ有利に進められる可能性が高まります。
解雇に納得がいかない場合は、ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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