残業月40時間が「きつい」と感じるのはなぜ? 月13.5時間の残業が平均値
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残業が月40時間の場合、精神的・肉体的にきついと感じる方も多いのではないでしょうか。
「残業月40時間」は原則として違法ではありませんが、適法な残業時間であっても、疲労が蓄積すると慢性的なストレスや睡眠障害といった深刻な影響につながりかねません。
また、「36協定が結ばれていない」「残業代が支払われていない」といった状況では、残業自体が違法となる可能性もあります。ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士が解説します。


1、月40時間の残業でも「きつい」と感じるのはなぜ?
労働者が、月40時間の残業で「きつい」と感じるのはなぜなのでしょうか?
以下では、平均残業時間や休息時間に基づいた理由を具体的に解説していきます。
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(1)平均残業時間は月13.5時間
厚生労働省の令和6年分毎月勤労統計調査によると、一般労働者の残業時間(所定外労働時間)の平均は月13.5時間でした。
月40時間の残業は、一般労働者の平均残業時間と比べると約3倍となります。これは平均よりも大幅に長い業務時間であり、ホワイト企業とはいえない可能性もあるでしょう。
したがって、「残業が多くて仕事がきつい」と感じるのは当然のことで、決して気のせいではありません。
出典:「毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報」(厚生労働省) -
(2)月40時間の残業で休息時間は毎日2時間削られる
1か月に20日間の稼働日があると仮定すると、月40時間残業した場合、1日あたりの平均残業時間は2時間です。月40時間の残業は、平日のプライベート時間を毎日2時間も削られることにつながります。
平日のプライベート時間が毎日2時間削られた際に起こる可能性のある問題は、以下のとおりです。- 睡眠時間が減少する
- 家族や友人との時間が減る
- ストレスが蓄積される
- 食生活が乱れる
月40時間の残業は単なる「平均よりも多い労働時間」というだけではなく、生活全体を圧迫する要因になり得ます。「きつい」と感じるのは、むしろ自然な感覚といえるでしょう。
2、こんな会社はブラック!? 月40時間の残業が違法になるケース
月40時間の残業自体は、適法となる場合が多いです。しかし、残業の状況や会社側の管理方法によっては違法となる可能性もあります。
月40時間の残業が違法となるケースや罰則について、以下で確認していきましょう。
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(1)適切に36協定が締結されていれば、原則、月40時間の残業は適法
月40時間の残業は、会社と従業員の間で「36協定」が適切に結ばれていれば適法となります。36協定とは、労働基準法に基づく時間外労働や休日労働に関する労使協定です。
労働基準法が定める労働時間(法定労働時間)は、原則として1日8時間・週40時間以内とされています。法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合、労使間で36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出なければなりません。
36協定で定められている残業時間の上限は「月45時間・年360時間」であるため、月40時間の残業は適法です。 -
(2)月40時間の残業が違法になるケース
月40時間の残業が違法になるのは、以下のようなケースです。
- 36協定を締結しないまま残業させている場合
- サービス残業させている場合
- 固定残業代が正しく運用されていない場合
36協定を締結せずに残業させている場合や、残業代を支払わずサービス残業をさせている場合は、明確な労働基準法違反です。
また、「固定残業制度(みなし残業制度)」を採用している場合も、固定残業代の金額が明確でない、または固定残業時間を超えた分の残業代が支払われていないといった場合は違法となります。 -
(3)月40時間の残業が違法であるときの罰則
月40時間の残業が違法となるケースでは、会社に対して罰則が科される可能性があります。
36協定未締結やサービス残業といった労働基準法違反の罰則は、「6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」です。
刑事罰が適用されなかったとしても、労働基準監督署からの是正勧告や企業名公表といったペナルティを受けるケースもあります。 -
(4)月45時間以上の場合はどうなる?
月45時間を超える残業には、特別条項付きの36協定の締結が必要です。
36協定で定める時間外労働は、原則として「月45時間・年360時間」が上限とされています。臨時的な特別の事情があり上限を超える場合は、特別条項付きの36協定を結ばなければなりません。
なお、特別条項を締結していても、時間外労働には、以下の上限があります。- 年720時間以内
- (休日労働と合計して)月100時間未満
- (休日労働と合計して)「2か⽉平均」「3か⽉平均」「4か⽉平均」「5か⽉平均」「6か⽉平均」について、全て、1⽉当たり80時間以内
上限を超える残業は違法となるため、注意が必要です。
お問い合わせください。
3、知っておきたい残業代の計算方法
残業代は「1時間あたりの基礎賃金×割増賃金率×残業時間」で計算できます。計算方法を知っておくことで、残業代が正しく支払われているかを確認できるでしょう。
以下では、残業代の計算式に用いられる各要素と計算例を解説していきます。
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(1)1時間あたりの基礎賃金
1時間あたりの基礎賃金は「基礎賃金÷1か月の平均所定労働時間」で算出します。
所定労働時間とは、会社が定める通常の労働時間のことです。たとえば、1日8時間・月20日勤務の場合は「8時間×20日=160時間」となります。
基礎賃金とは、基本給に役職手当や資格手当などを足した計算の基本となる賃金です。労働と直接的な関係が薄く、個人的な事情に基づいて支給される性質である手当(通勤手当や住宅手当、家族手当など)は基礎賃金に含まれません。 -
(2)割増賃金率
割増賃金率とは、時間外労働・深夜労働・休日労働に対し、基礎賃金に加えて支払われる割増賃金の割合です。基本的な割増賃金率は、以下のように定められています。
- 時間外労働(法定労働時間を超える残業):25%以上
- 深夜労働(22時~翌5時):25%以上
- 休日労働(法定休日の勤務):35%以上
通常の残業であれば、時間外労働の割増率である「25%」を用いて計算します。
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(3)残業時間
残業時間とは、実際に働いた時間外労働の時間数です。会社が固定残業制度を採用していない場合は、実際の労働時間を基準に残業代が発生します。
月40時間の残業であれば、「40時間」で計算します。 -
(4)月40時間の残業をしたときの残業代の具体例
「基礎賃金(月給)30万円・所定労働時間160時間・残業月40時間(深夜労働や休日労働はなし)」とした場合の計算例は、以下のとおりです。
【1時間あたりの基礎賃金の計算式】
30万円÷160時間=1875円
【残業代の計算式】
1875円(1時間あたりの基礎賃金)×1.25(割増賃金率)×40時間(残業時間)
=9万3750円所定労働時間にもよりますが、月給30万円の人が月40時間残業した場合、残業代だけで9万円以上支払われることになります。
残業代が毎月きちんと支払われていない場合、未払い残業代が発生している可能性があるため注意が必要です。
4、残業時間・残業代について悩んだときの相談先
残業時間や残業代について悩んだときは、「労働基準監督署」もしくは「弁護士」に相談することがおすすめです。それぞれの特徴やメリットについて、以下で解説します。
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(1)労働基準監督署
残業時間や残業代の支払いによる労働基準法違反が疑われるケースでは、労働基準監督署への相談を検討しましょう。
労働基準監督署とは、労働関係法令に基づいて、管轄の事業所の監督指導などを行う公的機関です。
労働関係法令違反が疑われる場合には、会社に対する指導や立ち入り調査が行われる可能性があります。実際に違反が認められれば、是正勧告や直接指導が実施されることが期待できます。
労働基準監督署の指導に法的な強制力はありませんが、会社が自らの違反を認めて改善してくれることが期待できます。必ず改善するわけではありませんが、会社が法律を守っているのか確認したい場合の最初の相談先としては選択肢の一つとなります。 -
(2)弁護士
会社に対する適正な対処や未払い残業代の請求を求める場合には、弁護士への相談がおすすめです。弁護士であれば、以下のようなサポートができます。
- 法的な知識に基づいたアドバイス
- 未払い残業代の計算や請求
- 会社との交渉の代行
- 裁判や労働審判に発展した場合の対応
弁護士に依頼することで会社と直接やりとりする必要がなくなり、精神的負担を大幅に軽減できるメリットもあります。初回の法律相談には無料で対応している法律事務所も増えているため、悩んだときはまず相談してみましょう。
- 法的な知識に基づいたアドバイス
5、まとめ
月40時間の残業が「きつい」と感じる理由は、平均残業時間の約3倍の労働を強いられているためです。平日のプライベート時間が毎日約2時間削られることで、睡眠不足やストレス増加など、心身に影響を及ぼす可能性もあります。
法律上、36協定が適切に結ばれていれば月40時間の残業は適法です。しかし、36協定未締結や残業代の未払いは明確な違法行為となります。
未払い残業代が発生している場合には、早めの対処が必要です。
もし「自分の残業が法律的に適正か不安」「未払い残業代があるかもしれない」と感じたら、弁護士に相談しましょう。弁護士に相談することで、状況に応じたアドバイスを受けられるほか、精神的負担も軽減できます。
ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスでは、残業代請求に関するご相談は何度でも無料です。ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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