ダブルワークの残業代はどっちが払う? 計算方法や注意点を解説

2026年02月16日
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ダブルワークの残業代はどっちが払う? 計算方法や注意点を解説

正社員として勤めながら、副業やダブルワークに取り組む方が増えています。

一方、厚生労働省が公表している令和6年の監督指導結果によると、賃金不払い事案は全国で2万2354件発生しています。残業代の支払いは法令上重要な義務ですが、正しく支払われていないケースも一定数存在するのが実情です。

本コラムでは、ダブルワークにおける残業代の請求先や計算方法・注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士が解説します。


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1、ダブルワークの残業代は本業、副業のどちらが払うの?

ダブルワークの場合、残業代を支払うべき会社はケースによって異なります。

まずは、ダブルワークにおける労働時間の考え方を押さえたうえで、残業代をどちらの会社が支払うのかを確認していきましょう。

  1. (1)ダブルワークの基本的な考え方

    ダブルワークとは、2つ以上の雇用契約を並行して結び、それぞれの会社で労働する働き方を指します。ダブルワークの場合、労働時間は「通算」して考えられるのが原則です。

    通算した労働時間が「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を超えた場合は、時間外労働として残業代の支給対象となります

    たとえば、本業では1日8時間、副業では1日2時間の労働時間である場合、1日の労働時間の合計は10時間です。法定労働時間を超える2時間分に対しては、本業か副業のどちらかの会社が残業代を支払うことになります。

  2. (2)残業代は原則として後から契約した会社が支払う

    雇用契約で締結した労働時間の通算が法定労働時間を超える場合は、後から契約した会社が残業代を支払うのが原則です

    たとえば、1日8時間フルタイムで勤務する従業員が副業を行う場合、副業先での勤務はすべて法定時間外労働となり、副業先が割増賃金を支払う必要があります。

    後から雇用契約を結んだ会社は、労働者の他社での勤務実態を認識したうえで雇い入れるという前提があるためです。

    ただし、この原則が適用されるためには、労働者が他社での労働時間を正しく申告しておく必要があります。また、すべてのケースで後から契約した会社が残業代を支払うわけではなく、例外もあるため注意が必要です。

  3. (3)例外的に先に契約した会社が支払う場合もある

    状況によっては、先に雇用契約を結んだ会社が残業代の支払い義務を負うケースもあります

    たとえば、本業と副業の通算労働時間が1日8時間・週40時間に達している場合に、労働時間を延長するケースです。

    本業と副業でそれぞれ1日4時間の雇用契約を結んでいる場合、すでに法定労働時間に達していることになります。このようなケースで本業の会社から1時間の残業が命じられれば、1時間分の残業代の支払い義務は本業の会社に生じます。

2、ダブルワークの残業代の計算方法

残業代は、1時間あたりの賃金に残業時間と労働基準法で定められた割増率をかけることで計算できます。通常の時間外労働の割増率は「25%以上」であるため、残業代の計算式は以下のようになります。

残業代=1時間あたりの賃金×残業時間×1.25


ダブルワークの場合は、まず両方の勤務先での労働時間を正確に把握しましょう。労働時間が把握できたら、法定労働時間を超えた残業時間が何時間になるかを算出します。

1時間あたりの賃金は、「(基本給+各種手当)÷1か月の所定労働時間」で算出できます。ダブルワークでは計算が複雑になりやすいため、不安な場合は弁護士への相談も検討してみてください

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3、ダブルワークで知っておくべきこと

ダブルワークで適正な残業代を請求するためには、労働契約や労働時間管理に関するルールを把握しておく必要があります。とくに知っておくべき3つのポイントは、以下のとおりです。

  1. (1)後に雇用契約を結ぶ会社に「他社での勤務時間」を伝える必要がある

    ダブルワークをする際は、後から雇用契約を結ぶ会社(副業先)に対して、他社での勤務時間を正しく申告しなければなりません。多くの企業では、就業規則などで申告が義務付けられています。

    「通算して1日8時間・週40時間を超える労働」が発生した場合、原則として副業先が割増賃金を支払う義務を負います。しかし、勤務時間が正しく伝わっていなければ企業側は法令順守できません。

    そのため、就業前の面談時などには、他社での勤務実態をきちんと伝えるようにしましょう。

  2. (2)双方の会社の就業規則を確認し、許可を得る

    ダブルワークを行う前には、本業・副業の両方の会社の就業規則に「副業に関する規定」があるかどうかを確認することが重要です

    会社によっては、「副業禁止」「事前申請が必要」「特定業種のみ可」など、詳細なルールを設けている場合があります。ルールを無視して副業をはじめた場合、就業規則違反として懲戒処分を受ける可能性もあるため注意が必要です。

    副業が許可制になっている場合は、口頭ではなく、書面やメールで正式に申請・承諾を得る手続きを行いましょう。

  3. (3)有給休暇中に副業した場合、「労働時間通算の対象外」になる

    有給休暇中の副業は、「労働時間通算の対象外」として扱われます

    たとえば、本業で有給を取得して休んだ日に副業で8時間働いたとしても、その日は法定労働時間を超えていないとみなされます。労働時間通算の対象となるのは、あくまで実際に労働が行われた時間です。

    有給休暇を利用して副業を行う場合、副業だけで法定労働時間を超えていなければ残業代は発生しないため注意しましょう。

4、ダブルワークの残業代における注意点

ダブルワークの残業代請求においては、労働形態や契約内容、法律上の例外規定などにも注意が必要です。以下では、とくに誤解やトラブルが発生しやすい5つの注意点について解説していきます。

  1. (1)フリーランス・個人事業主としての仕事は通算対象外

    フリーランスや個人事業主は「労働者」とはみなされず、労働基準法の適用外となります。そのため、業務委託契約で副業した場合は、本業の労働時間との通算はされません。

    労働時間が通算されるのは、あくまで「雇用契約」に基づいたダブルワークに限られます。

    ただし、実態として「使用者の指揮命令のもとに働いている」と判断されれば、労働者と同等に扱われる可能性もあります。契約形態と実態が一致しているかどうかは、定期的に確認しましょう。

  2. (2)36協定が必要になる場合

    法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働く場合は、会社と「36協定」を締結する必要があります。36協定とは、会社と従業員の間で結ばれる時間外労働や休日労働に関する協定です。

    ダブルワークの場合、後から契約した会社の労働時間が本業との通算で法定労働時間を超えるケースで、36協定の締結が必要です。また、先に契約している会社についても、時間外労働が発生する可能性があれば36協定の締結が必要となります。

    会社が36協定の締結と労働基準監督署への届け出を行っていなければ、残業自体が違法となるため注意が必要です。

  3. (3)残業時間の上限規制

    働き方改革関連法により、残業時間には上限規制が設けられています

    36協定を結んでいたとしても、原則として月45時間・年360時間が時間外労働の上限となります。また、特別条項付きの36協定を結んだ場合は、年720時間以内・月100時間未満・複数月平均80時間以内が上限です。

    ダブルワークの場合、上限規制は労働時間を通算した結果に対して適用されます。本業と副業それぞれで「規制内」でも、合計すると上限を超える可能性があるため注意しましょう。

  4. (4)管理監督者や農業・畜産業など「労働時間規制の対象外」もある

    労働基準法では、一定の職種や役職については労働時間・休憩・休日に関する規定から除外されると規定しています。除外されるのは以下のような職種・役職です。

    • 管理監督者または機密事務を取り扱う者
    • 農業・養蚕業・畜産業・水産業従事者
    • 監視または断続的労働に従事する者(使用者が行政官庁の許可を受けている場合)


    これらの職種や役職では、原則として時間外労働や休日労働の割増賃金が適用されません。そのため、ダブルワークをしていても労働時間通算や残業代支払いの対象にならない場合があります。

  5. (5)残業時間を立証できる証拠を残しておく

    ダブルワークに限らず、残業代を請求するためには、残業時間を立証できる客観的な証拠が必要となります。証拠として有効なのは、以下のような資料です。

    • タイムカードや勤怠システムの記録
    • 出退勤時間のメール・チャット・業務ログ
    • 業務指示書や日報、作業ファイルの送信履歴


    後日トラブルが起きた際、証拠があるかどうかで残業代請求の成否が大きく左右されます。会社側での記録が不十分なケースもあるため、労働者自身でできる限りの証拠を残しておくようにしましょう。

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5、まとめ

ダブルワークにおける残業代の問題は、本業・副業それぞれの勤務時間や契約内容、会社側の対応などが絡むため複雑です。「どちらが支払うのか」「どの時間が対象になるのか」といった点で、誤解やトラブルも生じやすいでしょう。

残業代が正しく支払われているのか不安な場合は、弁護士に相談することをおすすめします。労働問題の実績豊富な弁護士であれば、証拠の収集から残業代の計算・会社との交渉まで一貫したサポートが可能です。

未払い残業代を適切に請求するためにも、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています