遺産相続で強欲な相続人とトラブルになったときの対処法と注意点
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国税庁が毎年公表する路線価は、相続税や贈与税の算定基準となります。その金額をみると、銀座は都内のみならず、全国の中でも非常に地価が高い地域ということがわかるでしょう。
原則として、遺産を分けるために行う「遺産分割協議」は相続人全員が合意する必要があるため、反対する人が1人でもいると手続きは止まってしまいます。では、相続人の中に、自分の取り分を最大化しようと考える人がいて話し合いが進まない場合は、どうしたらよいのでしょうか。
この記事では、強欲な相続人との間でよくある相続トラブルや、紛争を未然に防止する方法、紛争になった場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。
1、遺産相続で強欲な相続人と起こりうる5つのトラブル
相続人の中に、自身の意見や権利を強く主張する人がいると、さまざまな相続トラブルに発展するおそれがあります。
まずは、相続人との間で起こる、よくある5つの相続トラブルについて解説します。
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(1)兄弟姉妹間におけるトラブル
これまで問題なく付き合ってきた兄弟姉妹であっても、遺産相続が絡むことで関係が劣悪になることは少なくありません。また、もともと兄弟姉妹間の仲が悪い場合や、これまで疎遠であった場合には、お互いの意見が合わずにトラブルになる傾向があります。
被相続人の子どもである兄弟姉妹の間では、お互いの法定相続分については相等しい地位になります。しかし、強欲な相続人がいると、何らかの理由をつけて配分を多く要求したり、自分の意見が通らない場合には、手続きに非協力的な態度をとったりすることがあります。 -
(2)不動産の取り合いによるトラブル
遺産の大部分を占める財産が土地や建物などの不動産である場合には、その不動産を巡って強欲な相続人と相続争いに発展するケースがあります。
不動産は、預金のようにわかりやすく分割することが難しい財産です。そのため、不動産の評価額を不当に高額・低額に見積もろうとする、分割方法について揉めるなどのトラブルが考えられます。
なお、判断を後回しにして、不動産を共同相続人間の共有状態のままにしてしまうと、活用も売却もできないまま、複雑な状態になってしまうことがあるため注意が必要です。 -
(3)遺産の囲い込みトラブル
強欲な相続人が1人で遺産を独占しようとするケースもあります。
たとえば、「長男だから家を守るのは当然」などという理由をつけて相続財産を独り占めしたり、好き勝手に利用したり、処分したりする場合があります。
戸主が亡くなった場合に、長男がすべての遺産を承継するという家督相続という考え方は現行の民法は採用していません。
現行法においては、原則として被相続人の自由な意思による遺言が尊重されることになり、遺言がない場合には相続人全員が話し合いによって遺産分割を行うことが基本です。
遺産分割手続きが完了していない段階では、遺産は共同相続人の共有状態となっているため、1人の相続人が勝手に利用や処分をすることは認められていません。
もし、そのような相続人が相続財産を囲い込んでしまっているような場合には、民法上の権利に基づき是正を求めていく必要があります。 -
(4)相続人が多すぎることによるトラブル
相続人の数が多すぎることから、紛争に発展することもあります。
相続人の人数が多いと、意見が分散する可能性が高くなります。たとえば、仲の良い親族とそうでない親族のグループに分かれてお互いに有利な分け方を主張し合うという事態が起こることもあるでしょう。
遺産分割は相続人全員で行う必要があるため、一人でも分割方法に反対する場合には、遺産分割協議はまとまりません。このような場合には、家庭裁判所の調停などを活用して解決する必要があるため、相続が完了するまでに時間を要することになります。 -
(5)不公平な遺言書によるトラブル
遺産相続において、あまりにも不公平な内容の遺言書が残されている場合にも、相続トラブルに発展する可能性があります。
被相続人が独断で作成したものであれば、相続人同士で話し合う余地はあるかもしれませんが、相続人の1人が判断能力の衰えた親に、自分だけが有利になる遺言書を作成させていた、というケースもあります。他の相続人が知らないうちに、「財産の半分」や「土地のすべて」を特定の相続人に遺贈するなどという内容の遺言が作成されていた場合、他の相続人は到底納得できないでしょう。
遺言書が残されている場合、形式的な要件や作成時の遺言能力などが問題となります。これらの要件が欠けている場合には、遺言が無効となる可能性があります。
2、強欲な相続人とのトラブルを未然に防ぐ方法
強欲な考えを持つ相続人がいる場合には、相続トラブルを事前に予防するために、さまざまな対策を講じておくことが重要です。
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(1)被相続人が適切な遺言書を作成しておく
相続トラブルを未然に防止するためには、被相続人が生前に公平な内容の遺言書を作成しておくことが重要です。不公平な内容の遺言書を作成してしまうと、後々相続人間で遺産を巡って争いに発展してしまう可能性が高まります。
一定の相続人には、遺留分が保障されています。遺留分とは相続人に認められている、最低限度の遺産の取り分のことです。
遺留分の侵害がある場合には、遺留分を侵害する相続分の指定を受けた相続人等が遺留分侵害額請求を受けることになります。 -
(2)遺産の分け方を知っておく
遺産の分け方を知っておくことは、遺産分割をスムーズに行うために重要です。
遺産分割の方法として、遺産に属する個々の財産を分配する「現物分割」や、遺産に属する物を売却したうえでその売却代金を分ける「換価分割」、一部の相続人が現物の分配を受け、その代わりに他の相続人に対してそれぞれの相続分の価額に相当する金銭を交付する「代償分割」などの方法があります。
また、民法の原則に従って分割した場合にはどうなるのか、という法定相続分を正確に理解しておくことも有用です。
たとえば、父親が亡くなり、相続人が母親と子ども3人である場合の法定相続分は以下のようになります。- 被相続人の配偶者(母親):2分の1
- 被相続人の子ども①:6分の1
- 被相続人の子ども②:6分の1
- 被相続人の子ども③:6分の1
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(3)相続人の数・相続財産を把握しておく
相続トラブルを回避するためには、あらかじめ相続人や相続財産を特定しておくことも重要です。相続人の数が増えると、それだけ遺産分割協議に関わる人が増えることになり、意見の不一致が発生するリスクが高まります。
また、遺産分割の対象となる財産にはどのような物があるのかを把握しておくことで、強欲な相続人が財産を独り占めしたり、隠匿や使い込みをしたりすることを予防できる可能性があります。
家族と普段からコミュニケーションをとり、どのような財産を保有しているのかを把握しておくことが重要でしょう。
お問い合わせください。
3、強欲な相続人とトラブルになった後の対処法
被相続人が亡くなってから強欲な相続人のせいで揉めている場合には、どうすればいいのでしょうか。続いては、相続発生後のトラブル対処法について解説します。
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(1)相続事件に詳しい弁護士に相談する
実際に相続トラブルに発展してしまった場合には、相続事件の取り扱い経験が豊富な弁護士に相談するのが良いでしょう。
法定相続分や寄与分、特別受益などケースに応じた適切なアドバイスを受けられるほか、相手との話し合いや交渉についても、代理人弁護士に対応を任せることができます。 -
(2)裁判手続きを利用する
相続人同士の話し合いで解決できなかった場合には、遺産分割調停・審判など裁判所の手続きを活用して解決を図ることになります。
なお、弁護士に早期から相談していれば、裁判手続きに移行した場合にも引き続き対応を任せることができます。弁護士が書面や証拠の提出、裁判への出廷などを代行してくれるので、負担は大きく軽減されるでしょう。
4、遺産相続のよくある質問
強欲な相続人と遺産相続トラブルになってしまった場合に、よくある質問をまとめました。回答を、ぜひ参考にしてください。
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(1)遺産相続には手続きに期限がある?
遺産分割手続き自体に法律上の期限はありませんが、期限が設けられている手続きもあります。そのため、話し合いが長引きそうな場合は、注意する必要があります。
- 相続放棄は、相続開始を知った時から3か月以内
- 相続税申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内
- 相続登記の期限は、不動産を相続で取得したことを知った等の日から3年以内
- 特別受益・寄与分の主張は、相続開始時から10年以内
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(2)遺言書の内容は絶対なのか?
遺言書の内容は絶対とはいえません。
遺言書が残っていたとしても、相続人や受遺者など利害関係者全員の同意があれば、遺言書と異なる遺産分割を行うことが可能です。また、遺言が形式的な要件を欠く場合や、遺言作成時に遺言能力がなかった場合などには、遺言が無効と判断されることがあります。 -
(3)遺産相続では兄(姉)が優先される?
相続の優先順位は、どのケースにおいても配偶者が第1順位であり、続いて「子ども」、「直系尊属」、「兄弟姉妹」の順番です。同じ順位の相続人が複数いる場合は、等しく分割することになります。
したがって、法的には兄・姉であるから弟・妹よりも優先されるということはありません。 -
(4)介護などに貢献していた相続人は相続財産を多くもらうことはできないのか?
寄与分を活用することで、多くもらえる可能性があります。
寄与分とは、被相続人の財産の増加や維持に貢献した相続人に対して認められるものです。
また、相続人以外の親族が、被相続人の介護やその他の貢献によって、財産を維持または増加させた場合、その貢献に応じて特別寄与料を請求することができます。
寄与分は相続人にのみ認められていますが、特別寄与料の請求ができる親族は「6親等内の血族、3親等内の姻族」とされています。
5、まとめ
相続人の中に強欲な人がいる場合には、さまざまなトラブルが発生するおそれがあります。相続トラブルを避けるためには、相続が開始する前に対策することが望ましいですが、相続が発生した後に紛争になってしまった場合は、適切に対応する必要があります。
ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスには、相続事件の解決実績が豊富な弁護士が在籍しています。強欲な相続人との間で揉めそうな場合、またはすでに揉めてしまっている場合は、ぜひご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています