遺産分割調停は弁護士なしでも問題ない? 依頼する4つのメリット

2025年05月07日
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遺産分割調停は弁護士なしでも問題ない? 依頼する4つのメリット

遺産分割協議では話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをすることになります。遺産分割調停は、基本的には話し合いの手続きですので、弁護士なしでも対応することは可能です。しかし、遺産分割では法的な争いが生じますので、知識や経験がない方では、適切な遺産分割を実現することは困難になることがあります。

弁護士に依頼するとさまざまなメリットがありますので、自分で対応するのが難しいと感じる方は、遺産分割調停を弁護士に依頼するとよいでしょう。

今回は、遺産分割調停は弁護士なしでも問題ないのか、遺産分割調停で弁護士をつけるメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスの弁護士が解説します。


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1、遺産分割調停とは? どのようなときに調停の手続きを行う?

遺産分割調停とは、相続人同士の話し合いでは遺産分割協議が成立しない場合に、家庭裁判所の調停手続きを利用して、どのように遺産を分割するかについての話し合いを行う手続きです。
遺産分割調停では、裁判官1人と調停委員2人からなる調停委員会が中立・公正な立場で、各相続人から主張を聞き取り、具体的な解決方法を提案するなどして、話し合いによる解決を目指していきます。

このような遺産分割調停は、主に以下のような場合に利用されます。

  • 遺産分割協議をしていても長期間話がまとまらない
  • 自己の主張ばかりで他の相続人の意見を聞き入れない相続人がいる
  • 連絡しても遺産分割協議に参加してくれない非協力的な相続人がいる
  • 相続人同士の折り合いが悪く、話し合いどころではない


遺産分割調停では、調停委員が相続人の間に入って話を聞いてくれますので、感情的にならず冷静に話し合いを進められるといったメリットがあります。また、法的判断が必要な事項については、裁判官の判断を仰ぐこともできますので、話し合いが行き詰まることを回避することが可能です。

2、遺産分割調停は弁護士なしでも問題ない?

弁護士に依頼せずに遺産分割調停を進めることができれば、弁護士費用がかからないのでお得だと思う方もいるかもしれません。しかし、弁護士に依頼しないことによるデメリットも少なからずあります。
遺産分割調停は弁護士なしでも問題ないのかどうか、詳しくみていきましょう。

  1. (1)遺産分割調停で弁護士の利用は必須ではない

    遺産分割調停で弁護士を利用しなければならないという決まりはありませんので、遺産分割調停を弁護士なしで行うことも可能です。
    裁判所が公表している令和5年の司法統計によると遺産分割事件で弁護士が関与した事件数は以下のとおりです。

    • 代理人弁護士の関与がある事件:1万1170件(80.52%)
    • 代理人弁護士の関与がない事件:2702件(19.48%)


    このように弁護士なしで遺産分割事件を対応している人も一定数いますが、割合としては、弁護士が関与する事件の方が8割以上となっており、圧倒的に多いです。そのため、調停の際、自分が弁護士に依頼していなかったとしても、相手方は弁護士をつけてくる可能性が高いと考えておいたほうがいいでしょう。

  2. (2)遺産分割調停で弁護士がいないことによるデメリット

    遺産分割調停は、弁護士なしで進められますが、法律の知識や専門的な書類の作成が必要になりますので、自分だけで行うのは難しいケースもあります。特に、遺産の範囲や評価、遺産分割方法、遺留分や特別受益などが争点となる事案では、遺産相続に関する知識や経験がなければ、適切な主張や立証をすることが困難ですので、弁護士なしでは不利な内容で調停が成立してしまうリスクがあります。

    また、相手方が弁護士をつけている場合、弁護士なしでは相手方の弁護士による法的主張に対抗することは困難です。弁護士に依頼しなかったばかりに、こちらに不利な条件で話し合いが進み、本来受け取れるはずだった遺産を取られてしまうという可能性も考えられます。

    そのため、法的争いがある事案や相手方が弁護士をつけている事案について、弁護士なしで対応するのではなく弁護士に依頼するのが得策でしょう。

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3、遺産分割調停の基本的な流れ

遺産分割調停の手続きは複雑で専門知識が必要な上、年単位で話し合いが長引いてしまうということがよくあります。具体的にどんな書類が必要で、どんな手順を踏むのか、全体像を把握しておきましょう。

以下では、遺産分割調停の基本的な流れについて説明します。

  1. (1)必要書類の準備

    遺産分割調停の申し立てにあたっては、以下のような書類を準備する必要があります。

    【作成が必要な書類】
    • 遺産分割調停申立書
    • 当事者目録
    • 相続関係図
    • 財産目録


    【取り寄せが必要な書類】
    • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
    • 相続人全員の戸籍謄本
    • 被相続人の戸籍の附票または住民票の除票
    • 相続人全員の住民票の写し
    • (遺産に不動産が含まれる場合)登記事項証明書、固定資産評価証明書
    • (遺産に預貯金が含まれる場合)預貯金残高証明書、預貯金通帳の写し
    • (遺産に有価証券が含まれる場合)有価証券の残高証明書
    • (遺産に車が含まれる場合)登録事項証明書または車検証の写し


    多くの書類は、遺産分割協議の際に利用したものをそのまま流用することができますが、戸籍謄本などは請求から3か月以内の原本の提出が必要になるので注意が必要です。

  2. (2)調停申し立て

    必要書類の準備ができたら、裁判所に遺産分割調停の申し立てを行います。
    申し立てをする裁判所は、相手方となる相続人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
    また、遺産分割調停の申し立てにあたっては、以下の費用がかかります。

    • 収入印紙:1200円分
    • 予納郵便切手:裁判所や相続人の数により異なるため申立先の裁判所に確認
  3. (3)調停期日の通知

    遺産分割調停の申し立てが受理されると、裁判所により初回の調停期日が決定されます。
    決定した調停期日については、申立人および相手方に通知され、相手方には申立書類一式が送られます。

    相手方は、申立書に記載された内容を見た上で、調停期日に向けて準備を進めていきます。

  4. (4)調停期日に家庭裁判所に出向く

    申立人および相手方は、決められた日時に家庭裁判所に出向いて調停期日を行います。
    初回の調停期日では、調停委員から手続きに関する説明がなされ、その後、個別に話を聞かれます。調停委員が当事者それぞれの主張や要望などを確認し、相続人全員の合意が得られるよう調整や遺産分割案の提示などを行います。

    初回の調停期日ですべて解決するケースは少なく、通常は複数回の調停期日を実施して、調停成立を目指していきます。
    調停での話し合いの結果、当事者全員の合意が得られた場合は、調停成立となり、合意内容が調停調書にまとめられます。調停終了後は、調停調書に記載された内容に従って相続登記や名義変更、預貯金の払い戻しなどの相続手続きを進めていくことになります。

  5. (5)不成立の場合は遺産分割審判に進む

    遺産分割調停は、相続人全員の合意がなければ成立させることはできません。何回か調停期日を実施しても合意成立の見込みがないという場合には、遺産分割調停は不成立になります。
    遺産分割調停が不成立になると、そのまま遺産分割審判に移行します。
    遺産分割審判では、遺産分割調停のような話し合いではなく、裁判官がさまざまな事情を考慮して、遺産分割方法を決定します。審判のイメージとしては、「裁判」に近いといえるでしょう。

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4、遺産分割調停を弁護士に依頼する4つのメリット

遺産分割調停を弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。

  1. (1)不利にならないようにアドバイスを受けられる

    遺産分割調停では、遺産の範囲や評価、遺産分割方法、遺留分や特別受益などが争点になるケースが多く、法的知識がなければ有利な内容で遺産分割をまとめることはできません。
    弁護士に依頼すれば、依頼者の利益を最大化するためにさまざまなアドバイスをしてくれますので、不利な内容で調停が成立してしまう事態を避けることができます。

  2. (2)手続きや交渉を任せられる

    遺産分割調停の申し立てにあたっては、作成しなければならない書類や取り寄せなければならない書類が多く、一般の方には負担が大きい作業といえます。
    弁護士に依頼すれば、遺産分割調停の申し立てに関するすべての手続きを任せることが可能です。また、調停期日にも弁護士が同行してくれますので、調停委員への説明や相手の主張への反論などにも対応してもらえます。

  3. (3)感情的な対立を避けられる

    遺産分割調停では、調停委員を介して話し合いが進められますので、遺産分割協議に比べて当事者同士の感情的な対立が生じるケースは少ないといえます。しかし、相続人同士の関係性によっては、調停の場においても感情論に終始してしまい、建設的な話し合いを進められないケースもあるでしょう。
    弁護士に依頼をすれば感情論ではなく法的観点に基づいて主張を行うことができるので、スムーズな遺産分割調停の進行が期待できます。

  4. (4)審判に移行した場合のサポートを受けられる

    遺産分割調停が不成立になると、自動的に遺産分割審判の手続きに移行します。
    遺産分割審判では、法的根拠に基づいて主張立証をしていかなければなりませんので、弁護士なしでは審判を有利に進めることは困難です。弁護士に依頼すれば調停から引き続き審判にも対応してもらえますので、安心して任せることができるでしょう。

5、まとめ

遺産分割調停を弁護士なしで進めると費用を抑えられるなどのメリットはありますが、法的知識が不足している場合や相手方に弁護士がついていると不利になる可能性があります
弁護士に依頼すれば、専門的な知識と経験から適切なアドバイスを受けられ、遺産分割調停をスムーズに進められますので、遺産分割調停は弁護士に依頼するのがおすすめです。
遺産分割調停の申し立てをお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 銀座オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています